体外受精のステップアップ

不妊治療を受けられる方々にも、治療に対するさまざまな考えがあるかと思います。
できるだけ自然な方法を望まれる方、どのような方法であれ、できるだけ早く妊娠を、と望まれる方などさまざまでしょう。

不妊症にはいろいろな原因があります。しかし、いろいろな検査をしても原因がはっきりしない、「原因不明不妊」のケースが一番多いのです。
このような、「原因不明不妊」では、段階的に治療を進めていきます。

まず、タイミング療法からスタートします。タイミング療法を3回程度行っても妊娠が成立しなければ、人工授精(AIH)に進みます。
AIHを6回ほど繰り返して妊娠しなければ、次は体外受精(IVF)へと移ります。
こうして、治療法をステップ・アップしていくわけですが、患者様の中には、「IVFでなくても、本当は自然妊娠するのでは」と思われる方も出てきます。
実際、10回以上もIVFしたのに妊娠せず、その後自然妊娠する方もまれにはおられます。

累積妊娠率グラフ

しかし、不妊治療は確率論です。
原因が不明である以上、ある治療法を一定期間試して妊娠しなければ、次の治療にステップ・アップしなくてはなりません。
そうすることが、結局は最も妊娠率が高く、また治療費用も少なくてすむことがわかっています。

また、「原因不明」とはいっても、卵子と精子が受精し、着床するまでには複雑なメカニズムがあり、それらのほとんどが通常の検査では調べようのないものです。
体外受精をして始めて、卵子と精子の相性が悪くて受精障害のあることが分かる場合もあります。
そのような場合は、顕微授精(ICSI)で受精をさせることで対処します。

複雑なメカニズムイメージ

厳しい事実を申し上げると、妊娠率は年齢と共に低下します。
自然妊娠を期待して、いたずらに時間を過ごすことがあってはなりません。
残念ながら、次の治療をためらっている間にチャンスを失ってしまう方が多くおられます。
是非、積極的に治療に取り組まれるようにお願いします。
わからないことがあれば、医師または、エンブリオロジストまでおたずねください。

臨床妊娠率グラフ