体外受精の排卵誘発法

排卵誘発法の種類

中刺激法丸ボタン

1日おきに排卵誘発剤を投与

中刺激法イメージ

低~中刺激法丸ボタン

体に負担の少ない排卵誘発法

低~中刺激法イメージ

排卵誘発法 選択のファクター

  • 下垂体ホルモン(FSH LH)
  • 卵巣ホルモン(E2 P4
  • 卵巣年齢検査(AMH)
  • 年齢
  • 男性因子(精液所見、年齢)
  • 過去の採卵周期
  • 可能な来院回数
  • 採卵日の制限があるかどうか
  • ご夫婦の片方もしくは両方が遠方や海外在住

各排卵誘発法の特徴

それぞれについて利点、考慮すべき点、主に対象となる方、費用について述べます。

刺激法

  • FSH ⁄ HMG注射を月経周期3日目から投与。注射の種類や投与量は各人により異なる。
  • 目安として、20代は1日150単位、30代は150~300単位、30代後半から40代は300単位、反応不良例には450単位。
    (ゴナールF®などのリコンビナント製品はやや少ない量で設定。)卵胞サイズを適宜計測し、採卵数を調整することができる。
  • 採卵前の排卵を抑制する方法としてアゴニスト(主に点鼻薬、稀に皮下注射)とアンタゴニスト(腹部皮下注射)を用いる。
    最近、新たにMPA(内服)を用いた方法も採り入れている。
  • アゴニストを開始する時期によりショート法、ロング法、ウルトラロング法がある。
    ショート法は月経初日から、ロング法は前周期の高温中期から、ウルトラロング法は数ヶ月前から、開始。
  • アンタゴニストは月経周期6日目に3mgを打ち、その後4日毎に採卵決定まで追加する。
  • HMG-MPA法の内服薬は排卵誘発時に1日10mgを併用する。
利点
  • 採卵数が多く、良好卵を選ぶことができる。
  • 凍結卵を確保しやすい。
  • クロミフェンのように内膜が薄くならない。
  • 発育卵胞数をコントロールできる。
  • 排卵後や空胞などが少ない(とくにアゴニストを使った場合には、ほとんどない。)
考慮すべき点
  • 毎日注射に通院する必要がある(ただし、自己注射、近医での注射も可能)
  • 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる場合がある
  • 発育卵胞数が多い場合(当院での目安は10個)は卵巣刺激症候群を避けるため、全胚凍結をすることになるため、同一周期に胚移植ができないことがある。
適応
  • 希望採卵数の多い方
  • 多くの胚を凍結したい方
費用
  • 注射の量が増えることと、凍結卵が多くなるため、一回あたりの採卵に関しては費用が高くなる。
  • ただし、凍結卵が複数個確保できれば、その分採卵回数が少なくなるため、逆にトータルで低く抑えることができる。

刺激法のそれぞれの利点、欠点等について下記に述べます。

アゴニスト法

ショート法

利点
  • アゴニスト開始直後2~3日間、下垂体ホルモンのフレアアップ(一度押さえ込まれることによりリバウンドをおこすこと)を卵胞発育に利用できる。
考慮すべき点
  • 卵子成熟法にアゴニストを使用できず、HCGを使用するため、卵巣過剰刺激症候群になる可能性がある。
  • 卵巣予備能が低い場合は、抑制が効きすぎて卵胞発育が悪くなる。
適応
  • ある程度卵巣予備能の保たれている大多数の方。
備考
  • アゴニストを2~3日だけ使用して、フレアアップのみ利用するウルトラショート法もあるが、その場合は排卵抑制にはアンタゴニストを使用する必要がある。
スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発ショート法スケジュール

記号説明

ロング法

利点
  • 下垂体ホルモンを完全に抑制してから排卵誘発剤を開始するため、卵胞発育が均一になる。
  • 排卵してしまう可能性がほとんどない。
  • 採卵日のコントロールが容易。
考慮すべき点
  • 下垂体ホルモンが完全に抑制されるため、注射量が多くなる。
  • 卵巣予備能が低い場合、卵胞が育たない。
  • 前周期の避妊が必要。
  • 卵子成熟法にアゴニストを使用できず、HCGを使用するため、卵巣過剰刺激症候群になる可能性がある。
適応
  • 多嚢胞性卵巣(PCO)
  • 年齢の若い方
  • 採卵日のコントロールが必要な方

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発ロング法スケジュール

記号説明

ウルトラロング法

ウルトラロング法薬剤

  • 下垂体ホルモンが数ヶ月にわたって完全に抑制されている状態から排卵誘発をスタートする。
  • そのため、月経は開始しない状態から注射をスタートする。
  • 下垂体抑制はリュープリン®などの皮下注射や点鼻薬ブセレリン®、スプレキュア®を用いる。
  • あとはロング法と同じ。子宮内膜症、とくに子宮腺筋症の方で、着床環境を整えるために行うことが多い。
利点
  • 子宮内膜症の方の着床環境が改善する
考慮すべき点
  • 卵巣予備能が低い場合は卵胞が育たない
  • 下垂体抑制がしばらく続く
  • 下垂体ホルモンが完全に抑制されるため注射量が多くなる
適応
  • 子宮内膜症
  • 子宮筋腫

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発ウルトラロング法スケジュール

記号説明

アンタゴニスト法

HMGセトロ法

HMGセトロ法薬剤

  • 月経周期3日目からHMG注射を開始。
  • 月経周期6日目よりセトロタイド®3mgを腹部皮下注射。
  • 卵胞が充分発育して採卵が決定するまで4日毎に追加。
利点
  • はじめの段階から下垂体ホルモンの抑制をしないので、アゴニスト法に比べ、卵胞が発育しやすい。
  • アゴニストのように、下垂体抑制が長くかからないで、一時的。
  • OHSSのリスクがある場合、卵子成熟をHCGを用いずにアゴニスト点鼻薬で行えるので、安全。
考慮すべき点
  • アンタゴニストが高額であるため、卵胞発育が遅い場合は、費用が高くなる。
  • アゴニストに比べ、わずかではあるが排卵してしまう可能性がある。
適応
  • ショート法で発育卵胞数が3個以下の方

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発HMGセトロ法スケジュール

記号説明

HMG-MPA法

月経周期3日目からHMG注射、内服薬を開始。

利点
  • 内服薬が非常に安価なため、費用が抑えられる。
  • 自己注射を用いれば来院日の制約が少ない。
  • はじめの段階から下垂体ホルモンの抑制をしないので、アゴニスト法に比べ、卵胞が発育しやすい。
  • アゴニストのように、下垂体抑制が長くかからないで、一時的。
  • OHSSのリスクがある場合、卵子成熟をHCGを用いずにアゴニスト点鼻薬で行えるので、安全。
  • 月経周期に関係なく排卵誘発を行える「ランダムスタート法」が可能。
考慮すべき点
  • 新鮮胚移植が行えない。
  • アゴニストに比べ、わずかではあるが排卵してしまう可能性がある。
適応
  • 来院回数を少なくしたい方
  • ランダムスタート法の場合、遠方の方、乳がん治療前など緊急に排卵誘発が必要な方

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発HMG-MPA法スケジュール

記号説明

中刺激法

中刺激法

月経周期3日目から内服薬と一日おきのHMG注射を開始。

利点
  • 自己注射を用いれば来院日の制約が少ない。
  • OHSSのリスクがある場合、卵子成熟をHCGを用いずにアゴニスト点鼻薬で行えるので、安全。
  • 月経周期に関係なく排卵誘発を行える「ランダムスタート法」が可能。
考慮すべき点
  • 新鮮胚移植が行えない。
適応
  • 来院回数を少なくしたい方
  • ランダムスタート法の場合、遠方の方
  • レトロゾールは適用外使用であり、排卵誘発剤としての使用はまだ一般的には認められていない。

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発中刺激法スケジュール

記号説明

低~中刺激法

完全自然法

原則として経口、注射にかかわらず、排卵誘発剤を使用しない。
ただし、採卵前の排卵を防ぐために1~2回、アンタゴニストやHMGを使用することもある。

利点
  • 通院回数が少ない。
  • 排卵誘発剤を使用しないため、体への負担が少ない。
  • 連続周期採卵が可能。
考慮すべき点
  • 月経周期が不順な場合は、不可能。
  • 不成功の度に採卵から行うため、採卵回数が多くなる。
  • 空卵胞のときがある。
  • 排卵後で、採卵できないときがある。
  • 一つしか採卵できないため、受精や分割がうまくいかなくて胚移植や凍結ができないときがある。
適応
  • 44歳以上の方やAMH低値などの卵巣予備能低下の場合、もしくは希望者
  • FSHが高値の場合
費用
  • 採卵数が1個で凍結費用不要のことが多く、採卵に対する費用は最も低くなる。

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発完自然周期スケジュール

記号説明

クロミフェン(クロミッド®またはセロフェン®)法

クロミフェン法薬剤

月経周期3日目より服用を開始。
HMG注射及びセトロタイドを併用して発育卵胞数を調整することもある。

利点
  • 経口薬のため通院回数が少ない
  • 連続採卵が可能
  • PCOの第一選択
  • 採卵数が少なく凍結卵も少ないため1サイクルあたりの費用は低めである
  • ただし不成功の場合は採卵から実施することになるため、2から3サイクルあたりの費用はやや高くなる
考慮すべき点
  • 内膜が薄くなるため、凍結して別周期で凍結胚移植することが多い。
適応
  • なるべく自然な方法を希望するができれば2、3個取りたい方

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発クロミフェンスケジュール

記号説明

セキソビッド®法

セキソビット法薬剤

薬剤名シクロフェニル。弱いエストロゲン作用をもつ非ステロイド系排卵誘発剤。
下垂体に作用し、ゴナドトロピン分泌を促すといわれているが、未だ不明な点も多い。
クロミフェンに比べて排卵誘発作用は弱い。
途中で注射を併用することもある。月経周期3日目から5日間服用。

利点
  • 経口薬のため通院回数が少ない
  • 連続採卵が可能
  • クロミフェンに比べ、内膜が薄くならないため、同周期での胚移植が可能なことが多い。
考慮すべき点
  • 排卵誘発作用が弱く、発育卵胞数は大抵の場合で1個。凍結ができない。
  • クロミフェンに比べ、卵胞が小さい状態でLHサージがおこりやすく、採卵前排卵のリスクが高い。
費用
  • 完全自然法とあまり変わらない。

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発セキソビットスケジュール

記号説明

レトロゾール(またはアナストロゾール®)法

レトロゾール法薬剤

もともとは閉経後乳癌の治療薬として使用されている。
卵巣内で男性ホルモンをエストラジオールに転換する際に必要な酵素であるアロマターゼを阻害するため、エストラジオール発生を抑え、ネガティブフィードバックでFSH分泌を高めて排卵を誘発するといわれているが、未だ不明な点も多い。
月経周期3日目からクロミフェンと同様に使用。

利点
  • 抗エストロゲン作用が少なく、内膜が薄くならない。
  • クロミフェンが効かないような卵巣予備能低下例でも卵胞が発育することがある。
考慮すべき点
  • 適用外使用であり、排卵誘発剤としての使用はまだ一般的に認められていない。
適応
  • クロミフェンでの発育不良例
  • 乳がんの既往

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発レトロゾールスケジュール

記号説明

HRT-OPU法

エストロゲンを服用し、リバウンド効果で卵胞発育を期待する方向。

適応
  • 卵胞発育が困難な方

スケジュール例(平均的なスケジュールです。実際のスケジュールはお一人ずつプランをたてて決定します。)

排卵誘発エストロゲンリバウンドスケジュール

記号説明

費用のシミュレーション