未成熟卵の体外成熟培養(IVM)

体外受精や顕微授精は、通常は成熟卵に行いますが、稀に、未成熟卵しか得られない場合があります。
未成熟卵は体外受精や顕微授精を行っても、殆ど受精しないため、体外成熟培養(IVM)を行います。

未成熟な卵子
成熟した卵子

体外成熟培養(IVM)とは?

IVMとは・イメージ

  • ホルモン剤などを添加した専用の培養液で1~2日培養し、体外で成熟させる方法です。
  • IVMを行っても成熟しない卵子もあります。
  • IVMで成熟した卵子の受精能や発生能は、体内で成熟した卵子と同じです。
  • 成熟したことを確認する際、卵子の周りを覆っている顆粒膜細胞を剥がすので、必ず顕微授精が必要になります。
    (顆粒膜細胞が着いていない卵子は一般体外受精では受精しません)
  • 卵子が成熟した時点で顕微授精を行うので、改めて精子を採取して頂くか、精子の凍結保存が2日間必要となります。
  • IVMで成熟し、受精・分割した卵子は凍結保存し、次以降の月経周期で融解胚移植します。
    (子宮内膜と、卵の日齢がずれるため、採卵した周期に胚移植することはできません)
  • IVMの費用は個数に関わらず100,000円(税込 110,000円)です。
  • 卵子凍結の場合、成熟した時点で凍結となります。成熟のタイミングにより凍結単位数が増える場合があります。

※キャンセルの場合、45,000円(税込 49,500円)が必要です。
※総額表示義務に基づき、税込価格を記載しています。会計時に計算上の誤差が生じる場合がございます。

IVMは次のような場合に行います。

  • 排卵誘発剤を使用しても体内で成熟しないとき
  • 排卵誘発剤への卵巣の過剰反応によって起こる卵巣過剰刺激症候群を避けるために、未成熟な段階で採取せざるを得ないとき
  • 卵胞(卵子が入っている袋)の大きさに卵子の成熟が伴っておらず、充分な大きさになった時点で採卵したにも関わらず、結果的に殆どの卵子が未成熟だったとき
  • 成熟卵と同時に、未成熟卵が多数採取されたとき

実際にIVMを行った卵子

未成熟卵

卵自体が小さく、周りについている顆粒膜細胞も小さく硬い状態です。
ピンク色に見えているのは、IVMの培養液です。
未成熟卵は、顕微授精を行っても受精しません。

通常の体細胞の2倍の染色体(4n=92)を持ちます。
成熟卵は、減数分裂により、染色体数が半減(2n=46)したものです。

IVM(24~48時間) 減数分裂再開 減数分裂再開

成熟卵

IVMで成熟した卵。顆粒膜細胞が軟らかく大きく広がっており、卵自体を見ると成熟のサインである極体が放出されています。
成熟卵には、体内で成熟した卵子と同様の受精能があります。
第二減数分裂中期に達した卵が成熟卵です。
核の分裂により、余剰な染色体が細胞外に放出されます。
放出された染色体は「第一極体」と呼ばれ、成熟のサインとなります。

精子受精 受精

受精卵

精子の進入により減数分裂は完成し、「第二極体」が放出され、受精卵となります。

レスキューIVM

顕微授精の段階で受精できない未成熟卵を体外で成熟させる方法です。
採卵した卵子は必ずしも成熟卵子とは限らず、未成熟卵である・または混在するケースもあります。

未成熟卵子は受精できませんので、これまでは不妊治療に使用されず廃棄されていました。
成熟卵子が十分採卵できた場合には、未成熟卵子を廃棄する選択枝があります。
しかし患者様によっては、十分な成熟卵子が採卵できずに未成熟卵子ばかり、それも続けて未成熟卵子ばかりということがあります。

このような患者様のために何とかしたいという思いから、未成熟卵子を体外で成熟させる当院独自の培養法を研究・開発し、2019年6月に国より初承認を取得したしました。
その結果、これまで受精能が無いため廃棄されていた未成熟卵子を成熟・受精させて胚移植、そして妊娠・出産まで望めるようになりましたが、レスキューIVMにより成熟した卵子の受精率や胚盤胞到達率の平均は、体内で成熟した卵子での平均に比べると劣ることも事実です。
こちらについてはレスキューIVM成績向上のために引き続き努めています。

体外受精に使用する卵子は、薬剤で刺激することで卵巣内の未成熟卵子を成熟させて採卵し、多くの負担をかけて採卵した大切な卵子を一つでも無駄にしないことを目的としています。

医療法人オーク会不妊ブログより