Oak Journal Review:成長ホルモン投与による採卵数と移植可能性の改善

Oak Journal Review:成長ホルモン投与による採卵数と移植可能性の改善

こんにちは。検査部の鈴木です。
今回の動画では、6月14日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewより、私が紹介したOak Journal Reviewの内容をお届けします。

紹介した論文は、
Growth hormone supplementation during ovarian stimulation improves oocyte and embryo outcomes in IVF/PGT-A cycles of women who are not poor responders.
Skillern A, Leonard W, Pike J, Mak W. J Assist Reprod Genet 2021;38(5):1055–60.
です。

卵巣刺激ホルモンへの反応が悪くなかなか採卵できないPOor Responder (POR)の患者様に対して、成長ホルモンを投与する研究は古くから行われ、成熟卵子の増加や妊娠率が上昇する等の一定の効果が得られています。また、正常に反応する患者様には効果がない事も分かっています。

PORには、ボローニャ( Bolognia)基準という診断基準があります。しかしこの基準を満たさない=しっかり卵巣ホルモンに反応するという事はありません。症状は、有るか無いかとデジタルのように明確に分類する事はできません。そのため基準には当てはまらないが、卵巣刺激ホルモンへの反応が良くない方もおります。
そこで、この研究では、ボローニャ基準は満たさないが、卵巣刺激ホルモンへの反応が悪い患者様を対象に成長ホルモンを投与する事の効果を調べています。

また、成長ホルモンの効果は古くから行われていたため、当時主流であった分割期の胚で移植した効果が主に調べられています。そこでこの論文では、得られる胚盤胞の数やPGT-A(1)により移植適となる胚の数が改善するかを調べています。
PORの基準を満たさない方にも成長ホルモンの効果はあるのでしょうか?それとも、PORの基準を満たさなければ効果が無いのでしょうか?
この研究の詳細は、こちらの動画でご確認ください。

参照
1. PGT-Aは、Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidyの略です。受精卵(胚)から少数の細胞を切り取り、染色体の数に異常がないかを調べる着床前検査の一つです。染色体数の異常があると、せっかく着床しても早期流産となったり、そもそも着床できない事がこれまでの研究で明らかになっています。
現在日本ではPGT-Aの効果を調べる臨床研究が進められており、当院もこの共同研究に参加しています。PGT-Aについては、当院の医師、田口のブログ記事を参照してください。