Oak Journal Review:EmbryoGlue®での培養時間と生産率の向上

Oak Journal Review:EmbryoGlue®での培養時間と生産率の向上

こんにちは。検査部の鈴木です。
今回の動画では、6月7日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewより、私が紹介したOak Journal Reviewの内容をお届けします。

紹介した論文は、
Clinical efficacy of hyaluronate-containing embryo transfer medium in IVF/ICSI treatment cycles: a cohort study.
Adeniyi T, Horne G, Ruane PT, Brison DR, Roberts SA. Hum Reprod Open 2021;2021(1):hoab004.
です。

この論文では、移植前にヒアルロン酸を多く含む培地のVitrolife社製EmbryoGlue®で培養する時間の長短と移植の結果の関係を調べています。
当院でも使用しているEmbryoGlue®ですが、コクランレビュー(1)により移植前にこの培地で培養する事で妊娠率が8%上昇する事が示されています(2)。このように既に効果が示されていますが、EBM(根拠に基づいた医療)を行うためには、時間と共に変化する医療環境に合わせて再度調べなおす必要が出てきます。
今回紹介する研究では、現代の医療研究に合わせて効果を再検討しただけではなく、培養時間の違い(2-4時間と10-30分)により効果に差が生じるのを調べている点もユニークです。

また、この論文で明らかにされた事ではありませんが、なぜヒアルロン酸を多く含む培地で培養すると妊娠率が上昇するかについて論文の考察で触れられていました。商品名にGlue(接着剤)が付いているので、そのイメージに引きずられて胚と子宮内膜の結合を促すのだと考えていましたが、今まで想像してなかった別の可能性が指摘されていた事も、とても示唆に富んでおりました。
この論文の詳細は、こちらの動画でご確認ください。

参照
1. コクランレビューは、EMB (根拠に基づいた医療)を提供できるように研究から得られた最良のエビデンスを収集、要約している国際的な非営利団体。
https://www.cochrane.org/ja/evidence
2. Bontekoe S, Heineman MJ, Johnson N, Blake D. Adherence compounds in embryo transfer media for assisted reproductive technologies. Cochrane Database Syst Rev 2014;2:CD007421.