ミズイロと学ぶ PGT-Aとは何か(その1)― 胚培養士の現場から見える「検査の意味」―

ミズイロと学ぶ PGT-Aとは何か(その1)― 胚培養士の現場から見える「検査の意味」―

「PGT-A」という言葉、耳にしたことはありませんか?
耳にしたことはあるけれど「何のこと?」という方もいれば、「なんだか難しそう」と感じる方もいることでしょう。
PGT-Aは、体外受精を前提として行われる検査ですが、すべてのカップルに必要となるものではありません。

「どんな検査なのか」「どのような場合に行われるのか」「何がわかるのか」など、さまざまな疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、PGT-Aについて3回に分けてお伝えしていきます。
今回は1回目として、「PGT-Aとは何か」という基本から見ていきます。

PGT-Aの基本の「き」

PGT-Aは、Preimplantation genetic testing for aneuploidyの略で、日本語では「着床前胚染色体異数性検査」と呼ばれています。
体外受精で得られた胚盤胞の一部を採取し、染色体の「数」を調べる検査です。
具体的には、胚盤胞の外側にある栄養外胚葉(TE:胎盤になる部分)の細胞を5~10個ほど取り出して解析します。
ヒトの染色体の数は、23対(46本)です。
このうち、男女共通で持っている22対(44本)の染色体は「常染色体」と呼ばれ、髪や目の色、血液型など、多くの身体情報が含まれています。
染色体はサイズの大きい順に1~22番まで番号がつけられており、それぞれ両親から1本ずつ受け継いでいます。
残りの1対(2本)は「性染色体」です。
性別を決める染色体で、女性はXX、男性はXYの組み合わせとなります。卵子はX染色体のみ持ち、X精子と受精すると女の子に、Y精子と受精すると男の子になります。

引用元:漫画「胚培養士ミズイロ」おかざき真里 小学館 週刊スピリッツ連載 単行本第6巻第34話より

なぜ、この検査が行われるのか

染色体の数が3本(トリソミー)だったり、1本(モノソミー)だったりと、過不足があることを「異数性胚(aneuploid embryo)」といいます。

胚の染色体の数に問題(医学的には「異数性」と呼ばれます)があると、着床しなかったり、流産になったりすることがあります。

年齢とともに増える傾向にあるため、体外受精において、良好胚(グレード評価で良いとされる胚)を移植しても、着床しない、妊娠が成立しない、または流産になることが増える傾向にあります。

なかには、良好胚を複数回移植しても妊娠が成立しない、流産を経験するカップルもいます。このような場合に、染色体の数に問題のない胚を選択して移植することで、流産のリスクを減らし、1回の移植あたりの妊娠の可能性を高めることが期待され、PGT-Aが行われることがあります。

グレード評価との違い

一般的に、グレードが良い胚盤胞は、妊娠しやすい傾向があるとされています。しかし、グレードが良くても妊娠に至らない場合や、流産となる場合もあります。

その背景のひとつとして、染色体の数の問題が関係している可能性があります。
グレード評価では、胚盤胞の発育段階や、内部細胞塊(ICM:赤ちゃんになる部分)、栄養外胚葉(TE:胎盤になる部分)の状態を観察していますが、染色体の数まではわかりません。

つまり、グレードと染色体の状態は、必ずしも一致するとは限らないのです。

グレードについては、
ミズイロと学ぶ― 胚の発育とグレード評価(その1)―グレードって何?」も参考にお読みください。

PGT-Aでも「見えない部分」がある

ただし、PGT-Aですべてがわかるわけではありません。
検査で調べているのは、あくまで栄養外胚葉(TE)の一部の細胞です。

なかには、TEには問題がなくても、ICMに問題がある可能性もあります。しかし、ICMを直接調べることは、胚の発育に影響を与える可能性があるため行われていません。

そのため、TEでは問題が見られなくても、胚全体の状態を完全に反映しているとは限らないという点にも注意が必要です。
PGT-Aは、胚の状態をより詳しく知るための検査ですが、その結果だけで判断できるものではありません。

次回は、PGT-Aで「何がわかるのか」、メリットと知っておきたいポイントについて考えていきます。

<<ミズイロと学ぶ― 胚の発育とグレード評価(その2)―

次回へ続く

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