不妊症の原因の約3割が卵管因子と言われています。卵管が閉塞(癒着)しており、受精障害を引き起こす卵管閉塞もその要因のひとつ。
閉塞(癒着)を取り除く「卵管鏡下卵管形成術」の専門家である多田佳宏ドクターに今日はお話を伺ってみました。
京都府立医科大学卒業、国立舞鶴病院、府立与謝の海病院、松下記念病院勤務等を経て現在オーク住吉産婦人科勤務。
子宮鏡手術の豊富な経験をもつドクター。
現在、男性不妊外来の中心となっており、泌尿器科との連携のもと、精巣内精子採取術(TESE)からホルモン治療まで幅広く担当。
卵管が閉塞(癒着)している方を対象に、卵管の狭搾部、閉塞部を広げる手術です。
卵管上で受精が行われるので、閉鎖(癒着)していると、受精ができません。
また、子宮外妊娠を引き起こすこともあり、最悪の場合、死に至るケースもあります。
卵管は二つあり、片方に閉塞部があるが、片方が通過しているので、大丈夫だという考えも大きな間違いです。
一般的に交互に排卵すると考えられていますが、中には、右の卵巣から連続して排卵することもあれば、左の卵巣から連続して排卵することもあります。
よって、閉塞部がある卵管側の卵巣ばかりから排卵すると、自ずと受精にはいたらないことが多くあります。
また、片方が通っていたとしても、もしかしたら、その卵管の状態が良くない場合もあり得ます。
卵管には細かなヒダがあり、そのヒダが動くことによって卵子が運ばれていきます。
その機能が弱っていると、上手く卵子が運ばれず、受精が難しくなることも考えられるのです。
閉鎖の原因は先天的なものから子宮内膜症やクラミジアなど多岐にわたります。
ファイバー(卵管鏡)を使った内視鏡手術です。
約1mmのカテーテルに約0.5mmのファイバーが内蔵されており、腟から通し、ファイバーで確認しながら、卵管の入口へと挿入します。
卵管の入口からバルーンで卵管の閉塞部や狭搾部を拡張していきます。
多少痛みを伴うこともありますので、当院では麻酔を使用し手術を行っています。
所要時間は片側で約20分程度、日帰り手術になり、料金は保険適用で約18万円。
術後、2年以内の妊娠率は30.3%ですが、約2割の方が手術後も再発されるというデータがあることも頭に入れておいてください。
子宮に筋腫がある場合は子宮鏡、閉塞(癒着)箇所が深い場合や変形がある場合は、腹腔鏡、子宮鏡、卵管鏡を併用して行います。
FTで通らないということは、卵管采(扇状の卵管の先端部分)が閉塞(癒着)している可能性が高いです。
よって、次のステップとして、腹腔鏡で、卵管采を開口する方法があります。
しかし、これらの手術は料金も高く、ここまでの手術をしないと卵管が通過しない状態であれば、体外受精に進むことをお勧めします。
ご本人の年齢も若い方で、男性側にも問題がなく、自然妊娠を望まれている方や人工授精を希望される方が対象です。
年齢が高く、男性側に問題がある方は、この手術ではなく、体外受精に踏み切るほうが良いかと思われます。
また、FTによって卵管が通過したからといって、妊娠するとは限りません。
当院ではFT後、タイミングや人工授精を3回行っても妊娠に至らない方には、体外受精に臨まれることを勧めております。
医学界では35歳から38歳と言われていますが、私は35歳だと断言します。
35歳でタイミングや人工授精で妊娠に至らなければ、体外受精にステップを進めるべきです。
これは日本産科婦人科学会の統計ではっきりと裏付けされているデータですが、35歳からの妊娠率には歴然たる差が出てきているのです。
誤解しないでいただきたいのは、38歳や40歳で妊娠している方がいらっしゃいますが、それは妊娠に対して能力が高い方なのです。
平均は35歳から妊娠率は下がってきます。そこを誤解して、「私も高齢でも産める」と考えることは大きな間違い。
妊娠に至る平均値、治療に向き合うコスト、時間を改めて自分の中で見つめなおすことを心がけてください。
そうすれば、自ずと、自分が向き合う治療法が見えてくると思います。