ミズイロと学ぶ PGT-Aはどのように行われているのか(その3)― 胚培養士の現場から見える技術 ―

ミズイロと学ぶ PGT-Aはどのように行われているのか(その3)― 胚培養士の現場から見える技術 ―

PGT-Aは、胚の染色体の数を調べる検査ですが、そのためには胚の一部の細胞を採取する必要があります。
この操作は、ほんのわずかな動きが結果に影響する、とても繊細なものです。
顕微鏡の中の小さな変化を見ながら、ひとつひとつの胚に向き合って行われています。

これまでの内容については、以下もあわせてご覧ください。

ミズイロと学ぶ!PGT-Aとは何か― 胚培養士の現場から見える「検査の意味」
ミズイロと学ぶ!PGT-Aで何がわかるのか― メリットと知っておきたいポイント

胚のどこから細胞を採取するのか

PGT-Aでは、胚盤胞の外側にある「栄養外胚葉(TE)」から細胞を採取します。
この部分は、将来胎盤になる細胞で、赤ちゃんになる「内部細胞塊(ICM)」とは異なる領域です。

検査のためにTEから数個(5~10個程度)の細胞を採取します。
必要な情報を得ながら、できるだけ胚への影響を抑える。そのバランスを考えながら行われます。

レーザーを使った繊細な操作

細胞の採取は、顕微鏡の下で専用の機器を使って行われます。

まず、レーザーで透明帯に小さな穴を開けます。
そのあと、栄養外胚葉の細胞をゆっくりと引き出し、必要な分だけ切り分けていきます。
言葉にするとシンプルですが、実際には力のかけ方やタイミングがとても重要です。
少し強ければ胚に負担がかかり、弱ければ細胞がうまく離れてくれません。
その都度、状態を見ながら、手の感覚で調整していきます。

引用元:漫画「胚培養士ミズイロ」おかざき真里 小学館 週刊スピリッツ連載 単行本第6巻第36話より

なぜICMは調べないのか

PGT-Aでは、赤ちゃんになる部分であるICMの細胞は採取しません。
ICMは胚の発育にとって重要な部分であり、直接触れることは避ける必要があるためです。
そのため、TEの細胞をもとに、染色体の状態を調べます。

ひとつひとつの胚に向き合うこと

採取した細胞は、その後、遺伝子解析の工程へと進みます。
その際に重要になるのが、「混入(コンタミネーション)」を防ぐこと、そして胚と採取した細胞を取り違えないことです。

他の細胞や異物が混ざってしまうと、正確な結果が得られなくなる可能性があります。
また、どの胚の細胞であるかが正しく対応していなければ、検査そのものの意味が変わってしまいます。
そのため、細胞の取り扱いや管理は、ひとつひとつ確認を重ねながら厳密に行われています。

胚はすべて同じ状態ではなく、大きさや細胞の付き方にも個体差があります。
そのため、同じ手順であっても、まったく同じように進むとは限りません。

胚培養士は、それぞれの胚の状態を見ながら、その胚にとって無理のない方法を選び、操作を行っています。

検査結果の背景にあるもの

このように、PGT-Aは胚のごく一部の細胞をもとに行われる検査です。
そのため、得られた結果が胚全体の状態をすべて表しているとは限らないという側面もあります。

こうした流れの中で、胚培養士はひとつひとつの胚に向き合いながら検査を行っています。

<<ミズイロと学ぶ PGT-Aで何がわかるのか(その2) ― メリットと知っておきたいポイント―

次回へ続く

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