ESHRE 2026で注目された研究 ― 不妊治療費の負担軽減

ESHRE 2026で注目された研究 ― 不妊治療費の負担軽減

現在開催中のヨーロッパ生殖医学会(ESHRE 2026)では、多くの興味深い研究が発表されています。その中でも、世界22の国・地域のデータを解析した「不妊治療費と出生数の関係」に関する報告は、大変注目を集めています。

今回の研究では、2021~2023年のART(体外受精などの生殖補助医療)登録データに加え、各国の経済指標や人口統計データを用いて、「子どもを1人授かるために患者さんが実際に負担する費用」を独自の指標として評価しました。

その結果、患者さんの実質的な自己負担額が世帯所得の50%未満に抑えられている国では、ARTによる出生数が2.67倍に増加することと関連していると報告されています。

さらに、韓国、スペイン、日本など、不妊治療への公的支援が比較的充実している国では、ARTによる出生の割合が高いことも示されました。一方で、自己負担が非常に大きい国では、ARTの利用率は著しく低い結果となっています。

この研究が示しているのは、「不妊治療を必要としている人は多く存在するものの、費用負担が治療開始や継続の大きな障壁になっている」という現実です。

日本では2022年から体外受精などに保険適用が導入され、多くの患者さんが治療を受けやすくなりました。当院でも、保険診療開始以降、「経済的な理由で治療をあきらめずに済んだ」という声を耳にする機会が増えています。

もちろん、今回の発表は学会で報告された研究であり、今後査読を経た論文化によってさらに詳細な検証が行われることが期待されます。それでも、世界規模のデータから「経済的支援が治療へのアクセスを改善し、出生数の増加につながる可能性」が示されたことは、今後の不妊医療政策を考える上でも非常に重要な知見と言えるでしょう。

私自身は残念ながら今年のESHREには参加できませんでしたが、今後も国内外で発表される最新のエビデンスを継続してご紹介し、患者さんに役立つ情報をお届けしていきたいと思います。

一方で、この研究結果をそのまま各国に当てはめて解釈するには注意も必要です。国によって、不妊治療に対する考え方や制度は大きく異なります。例えば米国では、提供卵子や提供胚、養子縁組など、自身の卵子によるART以外の選択肢も比較的広く受け入れられています。そのため、ARTによる出生割合だけでは各国の生殖医療へのアクセスや家族形成の実態を十分に表しているとは言えません。

それでも、経済的負担が軽減されることで、不妊治療を必要とする方が治療を受けやすくなる可能性を示した点は、本研究の重要なメッセージと言えると思います。


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