子宮卵管造影検査で油性と水溶性の造影剤のどちらがよいか?

子宮卵管造影検査で油性と水溶性の造影剤のどちらがよいか?

医局カンファレンスです。

子宮卵管造影検査で油性と水溶性の造影剤のどちらがよいかについての論文を紹介します。
(Hum reprod open 2019;1-13)

排卵は確認できる1119名の不妊患者(18から39歳、月経周期は整、排卵はある、少なくとも1年間はタイミングをとっているが妊娠しない、重度の男性因子はない)について、油性(557名)水溶性(562名)にランダムにわけ分析した結果です。
実施後6ヶ月間で妊娠率は油性39.7%、水溶性29.1%で、油性の方が有意に妊娠率が高いことがわかりました(P<0.001)。
また、BMIと精液量に関係が認められ、特にBMI≦30または精液量>3mlであるとき、油性の方が妊娠率が有意に高い結果となっていました。

(解説)
子宮卵管造影検査(HSG)は卵管性不妊症の診断に第1選択の検査として用いられます。
卵管通過性、卵管水腫症、さらに子宮内宮癒着、中隔子宮などの子宮内宮の所見が得られます。
使用する造影剤には油性と水溶性があります。油性の利点としては、明瞭な抽出像を得ることができる点、欠点は拡散像が翌日になること、造影剤が長期に残留する(特に卵管閉塞や卵管留水腫の場合)ことで不妊の原因になる可能性がある、血管に入って塞栓の原因となる点です。
水溶性の利点は1日で検査が終了する、吸収がはやく、血管内に入った場合の塞栓のリスクがありません。
欠点としては腹膜刺激症状が強いこと、抽出像が油性よりややおとる点です。

HSG後の高い妊娠率や生産率からHSGの効果は認めるが油性と水溶性のどちらがいいとは言い切れないといった結論になっていましたが、今回のRCT(ランダム化比較試験)で油性を使用した方が妊娠率が高いという結果がでました。
この原因として、はっきりとわかってはいませんが、子宮内膜や腹膜に対して免疫機能改善効果や卵管の繊毛運動を増強する効果などが言われています。
また、油性を使用して痛みがあった方が妊娠率が高かったといったデータもあります。

今回のRCTでは、油性使用のほうが妊娠率は高いが、高度肥満(BMI≧30)や精液量が少ない方にはそれほど効果がないという結果でした。(これはHSGの効果以外の要因が強いということだと思います。)

はっきりした原因がないのであれば一度HSG検査をしてみてはいかがでしょうか?