ホルモン補充での融解胚移植において、移植時の子宮内膜厚が薄くなる方が妊娠率が高くなる

ホルモン補充での融解胚移植において、移植時の子宮内膜厚が薄くなる方が妊娠率が高くなる

医局カンファレンスです。

ホルモン補充での融解胚移植において、移植時の子宮内膜の厚み(子宮内膜厚)が薄くなる方が妊娠率が高くなったという論文について紹介します。

後ろ向きのコホート研究です。2017年3月から2018年8月にかけての374周期について検討しています。すべてホルモン補充での融解胚移植です。

月経開始2-3日目からエストロゲン製剤を開始し、12-13日目に経膣超音波にて内膜厚と形状を確認し、7mm以上で3層構造(木の葉状)がみられればプロゲステロン製剤を2日以内に開始し、胚盤胞を移植するという方法です。
そして再度、移植の際に内膜厚を測定します。まず内膜厚の変化と妊娠継続率についてです。

〔妊娠継続率〕
子宮内膜厚の減少が

  • 5%未満:23.1%
  • 5%以上:45.2%
  • 10%以上:51.8%
  • 15%以上:58.9%

そして内膜厚の減少が10%以上のときに、胚のクオリティのみが妊娠継続率に影響し、年齢やBMIは関係ないという結果でした。
また、移植決定時の内膜が8mm以下では厚みの変化によって妊娠継続率に有意差はなかったが、8mm以上では内膜厚の減少が10%以上のときが54.1%、反対に内膜厚が変化なしか増加した場合が21.8%と内膜厚が減少した方が有意に妊娠継続率が高くなっていました。
まとめると、移植決定時8mm以上かつ移植日の内膜厚減少率10%以上であれば、着床に良い可能性があるという結果でした。

(解説)
内膜の厚みは通常移植決定日に7mm以上あれば問題ないとされていました(新鮮胚移植は8mm以上)。
しかし今回は移植日にも測定し、さらに内膜の厚みが減少していることがよいという結果になっていました。
通常でも黄体期前半では内膜厚はやや薄くなります。
ただ、今回はホルモン補充での融解胚移植に限定して内膜の確認としています。
その結果、厚みが薄くなる場合と薄くならない場合が認められました。
厚みが薄くならない原因としては、BCL-6やSIRT-1の過剰発現によるプロゲステロンレセプターへの抵抗性や変異、慢性子宮内膜炎などが関与していること、さらにエストロゲン/プロゲステロンのバランス異常が関与している可能性が考えられるとのことです。
厚みを減少させない対策として、プロゲステロン剤を増量したり、着床の時期のずれが考えられるので投与期間を延長することがよいのではと書かれてありました。
症例数が少なく、はっきりしたことはいえませんが、良好胚を移植して着床しない方はプロゲステロン剤を増量したり、ERA検査(内膜着床能検査)をしてみる意義はあるのではないでしょうか。