新鮮胚移殖と融解胚移殖の妊娠率

新鮮胚移殖と融解胚移殖の妊娠率

医局カンファレンスです。

採卵後、移植方法で新鮮胚移殖か全胚凍結して次周期以降で融解胚移殖するか、2通りあります。
今回紹介する論文はどちらが妊娠率がよかったかを年齢とP値をふまえて比較検討しています。
(Fertility and Sterility Vol 108,No2,Aug 2017,p254-261)

〈内容〉
新鮮胚移植をおこなった周期(①)と全胚凍結後に融解胚移植(②)で着床率と妊娠継続率を比較検討しました。

合計2910周期(新鮮1455周期 vs 凍結1455周期)。
患者背景は同じでした(年齢、ホルモン、採卵数、子宮内膜厚、移植胚数など)。

全体では②のほうが有意に高い結果でした。

また、妊娠継続率に関して、トリガー(HCGもしくはGnRHアゴニスト)投与時のP値(プロゲステロン値)と年齢(35歳以下と36歳以上)で検討しています。P値が1以下の時は、年齢に関係なく有意差はありませんでしたが、P値が1よりも大きい時は、どちらの年齢群も②の方が有意に高い結果になっていました。
また、②ではP値に関係なく35歳以下(約54%)、36歳以上(約48%)で妊娠継続率はほぼ同じでした。
P値と年齢別の①と②のオッズ比をみてみると、同じP値でも年齢が高くなるにしたがって②での妊娠率が高いことがわかりました。

〈解説〉
以前から凍結融解胚移殖のほうが着床率、妊娠率で有意に高いことは言われています。
また、妊娠時の合併症(早産、低体重児、前置胎盤、胎盤早期剥離など)が低いことも言われています。
今回の結果も同じなのですが、年齢とP値で検討した論文は初めてです。P値が高い場合、凍結融解胚移殖の方が継続妊娠率が高い結果となっていました。

これは、新鮮胚移殖では刺激周期による早期黄体化が問題になって着床が阻害されると言われていますが、凍結融解胚移殖の場合は早期黄体化がみられても、あまり問題になることはないという事です。
この理由として、刺激周期下での胚移殖では、高いエストロゲンレベルより子宮内の血管新生が阻害され、着床に問題になってくるからではと書かれてありました。

当院でも10個以上の可視卵胞(8mm以上)、採卵数が10個をこえることがあれば、全胚凍結にしています。
また、融解胚移殖時にはP4採血し、高い値であれば、一旦キャンセルをしています。
ベストのP値に関して、1以下がいいのではと考えていました。

今回の結果から、1以上であっても(今論文では平均が1.5でした)融解胚移殖に関しては妊娠率が変わらない結果となっていたので多少高くても問題ないこと、そして特に高齢の方にとっては凍結融解胚移殖がよりよいということです。