妊孕能の改善と症状のない子宮筋腫の摘出について

妊孕能の改善と症状のない子宮筋腫の摘出について

医局カンファレンスです。

妊孕能の改善や流産を減らすために、症状のない子宮筋腫を摘出することに意味はあるのかについてガイドラインが出ていましたので紹介します。(Fertility and Sterility Vol.108,No3,Sep 2017 p416-425)

(内容)
多くの論文をまとめたものです。

① 子宮筋腫は不妊治療の有無にかかわらず、妊娠する可能性を減少させるとは言い切れない。

② 筋腫の大きさ、数、場所(子宮内腔に変形をきたすような粘膜下筋腫や筋層内筋腫を除いて)によって妊娠しにくかったり、初期流産のリスクが上昇するとは言い切れない。

③ 漿膜下筋腫を摘出することが妊孕能を改善させるとは言い切れない。

④ 子宮筋腫手術によって、体外受精の結果(妊娠率、生産率)が悪くはなることはない。

⑤ 子宮筋腫手術(腹腔鏡か開腹)によって流産率(12週から28週)を減らすとは言い切れない。

⑥ 粘膜下筋腫のための子宮鏡下手術は妊娠率を改善させる可能性がある。

⑦ 子宮鏡下手術によって、不妊で粘膜下筋腫のある患者の初期流産を減らすことになるとは言い切れない。

(解説)
子宮筋腫には、子宮の中で発生する場所によって、粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫、頸部筋腫があります。妊娠することに対しては、子宮内腔にゆがみをもたらすかそうでないかによっても分けることができます。子宮内腔にゆがみをもたらす筋腫は粘膜下筋腫、筋層内筋腫の一部、もたらさないものは筋層内筋腫の一部、漿膜下筋腫、頸部筋腫(大きさにもよる)となります。

内腔にゆがみがあるものになると、不正出血や月経過多などで自覚症状が出てくることが多いです。また、内腔の拡大や変形、子宮の血流障害、異常な子宮収縮や蠕動運動による精子や胚の輸送障害などがあり、不妊や不育症になることがあると考えられています。

症状のあるものに関しては手術をすぐに選択することが考えられますが、今回の論文のように症状のない子宮筋腫に対して推奨されることは

① 体外受精では、胚の成長も良く、その他はっきりした原因が見つからず筋腫を認めるなら、筋腫の手術をすると妊娠にいたる可能性がある

② 粘膜下筋腫に対しては、子宮鏡下手術で妊娠率の改善が認められる可能性がある

ということです。

当院でもなかなか妊娠に至らず筋腫が認められる方には筋腫の手術を提案しています。
特に5cm以上の筋腫がある方には妊娠することだけではなく、安全に妊娠期間を過ごしていただくためにも、手術することを勧めています。