ミズイロと学ぶ!採卵できた卵子が1個。そのとき、受精方法をどう選択する?(後編)

ミズイロと学ぶ!採卵できた卵子が1個。そのとき、受精方法をどう選択する?(後編)

採卵できた卵子が1個。そのとき、受精方法をどう選択する?(後編)

前編では、『胚培養士ミズイロ』第9巻49話をもとに、採卵できた卵子が1個だった場合の受精方法の選択についてご紹介しました。
後編では、もしICSI(顕微授精)を選択した場合に、胚培養士がどのような準備を行っているのかをご紹介します。受精に向けた重要なポイントのひとつである「卵子の成熟」や、第一極体、レスキューIVMについてお伝えします。

ICSIの前に確認する「成熟」のサイン

体外受精において、成熟卵子であることが重要です。受精が成立するためには、卵子が受精できる段階まで成熟している必要があるからです。
第一極体は、成熟した卵子の細胞質の外側に小さく見える細胞で、減数分裂の過程で生じる構造です。卵子が受精できる段階まで成熟したことがわかるサインの一つです。
ただし実際の培養現場では、成熟しているかどうかの確認は、基本的にICSI(顕微授精)を行う卵子で実施します。
ICSIでは、成熟していることを確認できた卵子に対して処置を行います。そのため、まず卵子の周りにある卵丘細胞を取り除きます。これは、卵子の成熟度を確認するためだけでなく、粘稠性の高い卵丘細胞がホールディングピペットやインジェクションピペットに絡むのを防ぐ目的もあります。

第一極体が見えなかったら?

卵子の中には、まだ成熟しておらず第一極体が確認できないものもあります。
そのような場合には、すぐにICSIを行わず、培養液の中で成熟を待つという方法が選択されることがあります。
私たちオーク会では、このような未成熟卵を培養して成熟後にICSIを行う「レスキューIVM」を実施しています。レスキューIVMによって、「卵子が未成熟だったので、受精させることができません。そのため今回の治療周期は、中断になります」という事態を避けることが期待できます。
未成熟卵のすべてが成熟するわけではありませんが、培養によって成熟した場合には、ICSIを行い受精・胚発育を目指します。
採卵できた貴重な卵子を生かすための選択肢の一つとして取り組まれています。

<<YouTubeでレスキューIVMについて詳しく解説しています。


培養士が考えていること

受精方法は、「卵子が1個だからICSI」と単純に決まるものではありません。
医師や胚培養士は、卵子の成熟度、精子の状態、患者さんの背景や治療歴など、さまざまな情報を総合的に見ながら判断しています。
大切なのは卵子の数だけではなく、その1個の卵子が持つ可能性を最大限に引き出すことです。
たとえ、採卵できた卵子が1個だったとしても、その1個には大きな可能性があります。
私たち胚培養士は、「どうすればその卵子の力を最大限に引き出せるか」を考えながら、受精方法や処置のタイミングを慎重に判断しています。
『胚培養士ミズイロ』49話でも描かれているように、その1個の卵子には、患者さんご夫婦の思いと期待が詰まっています。
だからこそ、目の前の1個を大切に扱い、最善を尽くすことが培養室の役割なのです。

オーク会では、早発卵巣不全(POI)の患者さんを対象とした卵子凍結費用助成制度を実施しています。詳しくは下記をご覧ください。

<<早発卵巣不全(POI)の患者さんを対象とした卵子凍結費用助成制度

<<ミズイロと学ぶ!採卵できた卵子が1個。そのとき、受精方法をどう選択する?(前編)

次回へ続く

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