
PGTでは、胚盤胞の一部の細胞を採取して、染色体などを調べます。
「胚盤胞まで育てば、どの胚でも同じように細胞を採取できるのでは?」と思うかもしれません。
でも、実際の胚は一つひとつ形や細胞のつき方が異なります。細胞を採取する位置が見つけやすい胚もあれば、バイオプシー(胚の一部の細胞を採取して検査に出すこと)を行うのに難しい状態になっている胚もあります。
PGTのバイオプシーでは、胚の状態をよく観察しながら、どこから、どのように細胞を採取するかを考えることが大切です。今回は、胚の状態によってバイオプシーの方法が変わることについて見ていきましょう。
胚盤胞なら、どこからでも細胞を採れる?
PGTでは、胚盤胞の外側にある「栄養外胚葉(TE)」の細胞を採取します。TEは、胎盤になる部分です。一方、胚盤胞の内側にある「内部細胞塊(ICM)」は、赤ちゃんになる部分なので、バイオプシーでは触れないようにします。
そのため、細胞を採取するときには、まず胚盤胞のどこにTEがあり、ICMがどこに位置しているのかを確認します。
胚盤胞は、教科書のように、すべて同じ形をしているわけではありません。大きさや細胞の状態や数、透明帯との位置関係などにも違いがあります。
つまり、バイオプシーは「ここから採ればいい」と一律に決められるものではなく、その胚の状態を見ながら採取する場所を考える必要があります。
TEが透明帯から出ている胚では?
胚盤胞が発育すると、やがて透明帯から胚が外へ出ようとする「ハッチング」が起こります。
このとき、TEの一部が透明帯から外に出始めている胚もあります。
このような場合、すでに外へ出ている細胞をそのまま採取できるとは限りません。ICMとの位置関係などを確認しながら、どこから採取するのがよいかを考える必要があります。
一方で、ICM側からハッチングが起こっている場合があります。この場合は、もう少し胚盤胞の発育を待ち、ICMに触れずにTEを採取しやすい状態になるのを待つという方法もあります。または、反対側の透明帯に穴を開け、そこからTEの細胞を採取する方法が選択されることもあります。
このように、「TEから細胞を採取する」ことは同じでも、胚の状態によって方法が変わります。
透明帯から完全に出てしまった胚は?
さらに、透明帯から胚盤胞が完全にハッチングしている場合もあります。
この場合は、透明帯という支えがないような状態となるため、細胞をしっかり保持することが難しくなることがあります。
そのため、胚そのものを慎重に保持しながら、TEの細胞を採取する必要があります。
こちらも参考に
● PGT-Aの是非(https://www.oakclinic-group.com/blog/2020/12/22/pgt-a%E3%81%AE%E6%98%AF%E9%9D%9E/)
● ミズイロと学ぶ! PGT-Aはどのように行われているのか(その3)― 胚培養士の現場から見える技術 ―(https://www.oakclinic-group.com/blog/2026/05/04/what-is-pgt-a-part3-a-look-at-technology-from-the-perspective-of-an-embryologist/)
「検査できるか」だけではなく、「どう検査へつなげるか」
PGTのバイオプシーでは、必要な細胞を採取することだけでなく、できるだけ胚への負担を抑えることも重要です。
だからこそ、胚がどのような状態にあるのかを見極め、その状態に合わせて方法を選ぶことが求められます。
またPGTというと、検査結果に目が向きがちです。
しかし、その結果が出るまでには、胚を観察し、バイオプシーを行い、採取した細胞を検査につなげるという過程があります。
そのなかでは、すべての胚に同じ操作をすればよいわけではありません。
「どこから細胞を採るか」「今、採るのがよいのか」「もう少し発育を待ったほうがよいのか」など、胚の状態を見ながら考える必要があります。
PGTは、胚の染色体などを調べるための検査ですが、その入り口にあるバイオプシーにも、一つひとつの胚に合わせた判断があります。
次回は、バイオプシーで採取する「細胞の数」に注目してみましょう。
採取する細胞は、多ければ多いほどよいのでしょうか?
<<ミズイロと学ぶ!PGTのために、細胞はどのくらい採る?― 必要な細胞数と胚への負担 ―
次回へ続く
【関連リンク】
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