ミズイロと学ぶ!精子DNAの状態を調べる「DFI検査」とは?(後編)―精子の酸化ストレスを調べる「ORP検査」とは―

ミズイロと学ぶ!精子DNAの状態を調べる「DFI検査」とは?(後編)―精子の酸化ストレスを調べる「ORP検査」とは―

前編では、通常の精液検査ではわからない精子DNAの状態と、それを調べる「DFI検査」についてお話しました。

精子DNAの損傷が多い場合、受精率や胚の発育、妊娠率の低下や、流産との関連が報告されています。

では、そもそも精子のDNAは、なぜ傷ついてしまうのでしょうか。

その背景のひとつとして考えられているのが、「酸化ストレス」です。

後編では、精子DNA損傷と酸化ストレスの関係、そして精液中の酸化ストレスを調べる「ORP検査」についてみていきましょう。

DFIは、なぜ高くなるの?

精子DNA損傷の背景のひとつに、活性酸素による「酸化ストレス」があります。

活性酸素は、体内で生じる物質のひとつで、適量であれば体の免疫防御などに関わります。 一方で、活性酸素が過剰になり、抗酸化物質による還元力とのバランスが崩れると、細胞などにダメージを与えることがあります。

精子は酸化ストレスの影響を受けやすいとされており、過剰な活性酸素が精子DNAの損傷につながる可能性があります。

酸化ストレスを高める要因は?

酸化ストレスには、さまざまな要因が関係すると考えられています。

代表的なものとして、加齢、喫煙、過度な飲酒、食生活、運動不足や過度な運動、睡眠不足、心理的ストレス、環境因子などが挙げられます。

ただし、これらがあるから必ずDFIが高くなるというわけではありません。複数の要因が重なり、精子DNAの状態に影響することがあります。

● 加齢
年齢を重ねると、体内の抗酸化機能が低下するなどの変化が起こり、酸化ストレスが高まりやすくなると考えられています。 前編でも紹介したように、DFIは加齢とともに上昇する傾向が報告されています。

● 生活習慣や環境
喫煙、過度な飲酒、睡眠不足、偏った食生活などの生活習慣や、さまざまな環境因子も、酸化ストレスや精子の状態に影響する可能性があります。 だからといって、生活習慣を変えれば必ずDFIが下がるという単純なものではありませんが、健康的な生活を心がけることは、精子の状態を考えるうえでも大切です。

● 精索静脈瘤
精索静脈瘤とは、精巣から心臓へ血液を戻す静脈に血液が逆流し、精巣の周囲の静脈がこぶ状に拡張する状態です。精索静脈瘤があると、精巣周辺の温度上昇や血流の変化が起こり、酸化ストレスが高まることがあります。その結果、精子をつくる働きや精子DNAに影響を及ぼす可能性があると考えられています。

酸化ストレスは、どうやって調べるの?

ここまで読んで、 「酸化ストレスが精子DNAに影響するなら、実際にどのくらい酸化ストレスがあるのか調べられるの?」 と思った方もいるかもしれません。

体の中で物質が酸化していく傾向は、実は数値として測定することができます。精液についても同じで、精液中の「酸化」と「還元」のバランスを数値化する方法があります。

それが「ORP検査」です。

ORPは「Oxidation-Reduction Potential(酸化還元電位)」の略。精液中の酸化・還元のバランスを「酸化還元電位」として測定し、精液がどの程度酸化ストレスに傾いているかを評価します。

ORP検査は、精子ではなく「精子がいる環境」をみる

DFI検査とORP検査は、どちらも精子の状態を考えるうえで役立つ検査ですが、見ているものが異なります。

DFI検査は、精子そのもののDNAの状態をみる検査。一方、ORP検査は、精子が泳いでいる「精液の環境」をみる検査です。

たとえば、川に魚が泳いでいるとします。

川の水質が良ければ、魚は元気に泳いでいるでしょう。でも、水質が悪ければ、その影響を受けて、魚の育ちが悪くなったり、元気に泳げなくなったりすることがあります。

精子も同じように、どんな環境に置かれているかが、その状態に影響することがあります。

つまり、 DFI=魚そのものの状態をみる ORP=魚が泳いでいる水の状態をみる

と考えると、わかりやすいでしょう。

ORPの数値が高い場合は、精液が酸化ストレスの高い状態に傾いている可能性があります。こうした状態は、精子の状態を考えるうえで無視できない要素の一つです。

DFIとORPを組み合わせて、精子の状態を考える

DFI検査では、精子DNAがどのくらい損傷しているのかをみることができます。一方、ORP検査では、精子が存在する精液の環境が、酸化ストレスにどの程度傾いているのかを評価します。

両方の検査を行うことで、精子DNAの状態だけでなく、その背景にある酸化ストレスについても考える材料になります。

検査結果を、次の一歩につなげる

DFIやORPの数値は、精子の状態を考えるための一つの情報です。

数値だけで妊娠の可能性や治療方針が決まるわけではありません。年齢や精液所見、これまでの治療経過などもあわせて、総合的に判断することが大切です。

「精液検査では大きな異常がないのに、なかなか妊娠しない」「生活習慣なども見直しているけれど、精子の状態が気になる」など、気になることがある場合には、DFIやORPなどの検査について医師に相談してみてもよいでしょう。

精子の「数」や「動き」だけではなく、「DNA」や「精子を取り巻く環境」にも目を向けることで、精子の状態をこれまでとは違った角度から考えることができます。

<<ミズイロと学ぶ!精子DNAの状態を調べる「DFI検査」とは?(前編)―精液検査ではわからないこと―

次回へ続く

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