ASRM2013 胚着床・着床障害関連トピックス…その1

ASRM2013 胚着床・着床障害関連トピックス…その1

医局カンファレンスです。

早速紹介していきます。

1.「プロスタグランディンの仲間・プロスタサイクリンが体外受精-胚移植による妊娠率を上げる」

プロスタサイクリン製剤を添加した胚培養液を用いたところ、無添加培養液よりも臨床妊娠率が有意に高かったというもので、以前にも報告がありましたが(Huang JC et al., Hum Reprod 2014;19:1856-60など)、今回の第1相臨床試験でもやはり効果を認めたようです。

プロスタグランディン類は着床に必須とされる一方で、子宮収縮、月経、流産、(もしかすると着床不全)にも、深く関わっている難しい分子です。量の多い少ないで妊娠に対する作用が変わるのかもしれません。
その中で、プロスタサイクリンは卵管で大量に作られる分子で、今後の追試に期待です。

2.「染色体正常胚の中でミトコンドリアDNAの少ないものは、多いものより臨床妊娠率が高かった」

ミトコンドリアはAMP合成、細胞呼吸をはじめとして多数の生命現象に無くてはならない細胞の中の部品です。ミトコンドリアは核とは異なる独自のDNAを持っています。
精子由来のミトコンドリアは、通常は受精後に排除されてしまうため子は母方のミトコンドリアDNAを受け継ぎます。(小説「パラサイト・イブ」はミトコンドリアをテーマにしています)

この英国からの報告では、最終的に染色体正常胚のみを選んで比較しています。
国内ではまだ一部にのみ承認されている着床前診断がすべてに行われています。ミトコンドリアDNAの少ない胚ほど細胞へのストレスを受けていない好ましい環境にあるのではないかと結論しています。

3.「白血病抑制因子(LIF)遺伝子の一塩基多型は着床不全とは無関係と考えられる」

LIFの詳細については2012-05-11のブログ記事も参照ください。着床不全の治療薬として一時は大きく期待されましたが、その後の臨床成績が好ましくなく、現在使用には至っておりません。
一方で、LIFの阻害剤(働きを止める薬)に着床を防ぐ効果があり、避妊薬として有効ではないかという論文が最近複数出てきています。

LIF遺伝子のT/T (rs929271) polymorphismというのをカップルが持つ場合、特に妊娠が成立する確率が高いという報告がありましたが、今回は他の多型と比べても違いが無いとして、否定されています。
胚着床率、臨床妊娠率、流産率、継続妊娠率すべてにわたって統計上の有意差が示されませんでした。
LIFの着床不全への応用は、諦めなければならないのでしょうか。