ホルモン補充周期と自然周期の、SCH(胎盤後血腫)の発生頻度への影響

医師の田口早桐です。

Comparison of subchorionic hematoma in medicated or natural single euploid frozen embryo transfer cycles
Fertility Sterility  7月号より

凍結胚の融解胚移植によって妊娠が成立したあと、胎盤後血腫(SCH:subchorionic hematoma)といって、着床部位で胎児部分と胎盤の間が剥がれかけた状態になることが、自然妊娠と比べて多いといわれています。

この論文では、凍結胚の融解胚移植をホルモン補充周期で行った場合と自然周期で行った場合とで比較し、その違いがSCHの発生頻度に影響するかどうかを調べています。
また、SCHの発生が、周期中のエストロゲンの値に関係するかどうかも調査しています。

対象は、1273周期で、すべて、染色体正常胚(着床前スクリーニング済ということ)を単一胚盤胞にて移植しています。アメリカでの後方視的研究です。内訳は、自然周期213周期、ホルモン補充周期1060周期です。やはりどこでもホルモン補充周期のほうが多いようですね。

結果は、自然周期に比べてホルモン補充周期のほうがSCHの発生率は高いという結果だったそうです。また、その発生に、エストロゲンの値は関係せず(ホルモン補充周期のほうが一般的に自然周期よりも移植前のエストロゲン値は高くなる。)、また、幸いなことに、SCHが起こったことによって流産につながったという明らかな関連性もなかったようです。

なぜホルモン補充周期でSCHが多かったのか、この論文では明らかになっていないし、とくに何かの示唆もされていないのですが、最終的な流産率の増加にはつながらなかったようなので、良かったです。

論文のなかで、SCHの程度(大きさや部位)、出血をともなっていたかどうかに関して詳しく述べられていません。また、SCHが見つかれば、当然のことながら安静にするでしょうし、ときには入院加療や止血剤の投薬などもすると思うので、その辺の介入が流産率の増加に繋がらなかった要因なのかもしれません。だとすれば、頻回の超音波検査によるSCHの観察や安静指示がとても有効ということになります。

凍結胚の融解胚移植、ホルモン補充周期の比較に関して様々な論文が出ているなかで、また当院のデータでも、とくに成績に明らかな差はないようです。だとすれば、日程の調整ができるホルモン補充周期を選択する人が圧倒的に多いという傾向は変わらないと思います。