ERA(子宮内膜着床能検査)の臨床効果に関する国際共同臨床研究(ランダム化比較試験)の結果

医師の田口早桐です。

ERA(子宮内膜着床能検査)の臨床効果については、日本では弊院が先駆けとなり、逐次、国内外の学会などで成果を報告してまいりました。
その1端は、下記のように全国紙などでも紹介されてきました。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180219-OYTET50056/

しかしERAの真の臨床効果については、 ランダム化比較試験の結果を待たざるを得ず、その結果は世界中の患者様及び専門家の間で待ち望まれていました。

弊院のスタッフ医師を含む国際共同臨床研究 (ランダム化比較試験 )の成果が、下記の査読つき英文論文誌に出版されたことで「ERAは不妊治療に有用か?」に関するお答えをさせていただくことが可能になりました。

論文; 掲載誌 Reproductive BioMedicine Online
タイトル:A 5-year Multicenter Randomized Controlled Trial of In Vitro Fertilization with Personalized Blastocyst Transfer versus Frozen or Fresh Transfer

論文の全文は、下記にて、無料で、お読みいただけます。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1472648320303199

日本からは弊院のみ参加、私と船曳美也子医師の2人のみが上記論文の著者として貢献しています。

それでは、下記にて結果を簡単に紹介させていただきます。

今回の研究では胚盤胞移植をともなう不妊治療を受けておられる37歳以下の458名の患者様が対象となっています。彼らは、ERA群、凍結融解胚移植(FET) 群、新鮮胚移植(ET) 群のいずれかに割り付けられ、着床率、臨床妊娠率、流産率、出産率などが比較検討されました。

その結果、まず、 ITT解析(治療意図の原理に基づく解析)において、最初の胚移植における累積臨床妊娠率は、ERA群が93.6%とFET群よりも14.6%有意に改善しました。ただし残念ながら、累積出産率についてはERA群が62.4%、FET群が55.4%と統計的に有意な改善は見られませんでした(ただ、いわゆる臨床的有意差は、ありそうです)。

しかし、Per protocol analysis(治験実施計画書に適合した対象集団についての解析)においては、最初の胚移植における累積臨床妊娠率は、ERA群が95%とFET群よりも24.4%有意に改善し、累積出産率 についてもERA群が71.2%とFET群よりも15.8%有意に改善しました。

こうした結果の場合、ERAは累積臨床妊娠率向上効果を有するだろうし、ERAによって累積出産率向上も期待できると解釈できます。ただ、現時点では今回の主任研究者のSimon教授も指摘されたように、 今回の研究の参加患者の脱落率の多さなどを考慮すれば、「ERAの潜在的な臨床効果が確認された」と言うのが妥当でしょう。

患者様のご期待に応えられる可能性が以前よりも増しましたが、更なる研鑽が必要なのは言うまでもありません。たとえば、今回の研究では、3群とも、PGT-Aについては、それぞれ3人から6人にしか行われておらず、今後のERA+PGT-A戦略によって、さらに流産率の減少と出産率の向上が可能になるのではないかと期待しています。ちなみに弊院は、日本のPGT-A臨床研究の学会認定機関でも、あります。また、今回の研究では対象外だった、もう少し高い年齢層(37歳以上)では、どうなるのかという検討も今後の課題です。

なお、いくら最大級の科学的証拠を得られるランダム化比較試験とはいえども、1つの論文で最終結論を見出せず、複数の同種レベルの試験でも同じような結果が得られる必要があります。その点、中国でも同種の研究が進行中であり、結果が待ち望まれます。また、今回の臨床的結果を支える新たな基礎研究(なぜ、ERAによって不妊治療の臨床効果があがるのか)も、近いうちに論文として出される予定です。

最後に、今回の研究は、長年にわたる、研究者、スタッフ及び参加協力いただいた患者様の尽力による成果です。

この場を、借りて、深く御礼申し上げます。