IGF-1(インスリン様成長因子)と体外受精周期の卵巣の反応との関係

IGF-1(インスリン様成長因子)と体外受精周期の卵巣の反応との関係

医師の田口早桐です。

Cycle day 2 insulin-like growth factor-1 serum levels as a prognostic tool to predict controlled ovarian hyperstimulation outcomes in poor responders

Fertility Sterility 6月号からの論文です。

今、体外受精周期の卵巣の反応を予測するためには、月経周期3日目あたりのFSHの値と超音波で卵巣内の小卵胞の数を数えて目安にすることも多いと思います。

この論文では、月経周期2日目のIGF-1 (insulin-like growth factor-1/インスリン様成長因子/全身の細胞にあって、成長ホルモンの働きを助けます。) という物質が、Poor responder(卵巣の反応が悪い人/あまり卵胞が発育しない人)の体外受精周期での卵巣の反応を知る指標になる可能性を示唆しています。
また、周期前にエストロゲンを使用することで、2日目のIGF-1の値が下がり、採卵数が2倍に増え、受精率や妊娠率もその増加につれて上がった、という報告をしています。

後方視的調査で、まず、体外受精に対する発育卵胞数や採卵数を3グループに分け(低反応(4個以下)、正常反応(8∼12個)、高反応(18個以上))、それぞれの月経周期2日目のIGF-1を比較したところ、低反応グループでは、非常に高い値になっていました(正常反応の2倍、高反応の3倍)。

興味深いのは、低反応のグループをつぎに周期に入る前にエストロゲンを使用してみたところ、周期2日目のFSH値もIGF-1の数字も半分以下になり、正常反応群と変わらない値になりました。その結果、採卵数が2倍に増えたとのことです。卵子の質に関しては、受精率(2PN数)や移植可能胚数が採卵数の増加とともに増えたということは、とくに質に影響がなかったことを示唆しています。

一般的に、低反応の人に対して、周期3日目前後のFSH値を指標にする際、10以下であれば問題なしとすることが多いと思います。
この論文では、低反応のグループの場合でも平均8.8 mIU/mLとあまり高値ではありませんので、通常ならふつうに排卵誘発することになると思います。
しかし、IGF-1は平均107 ng/mLと、高値。こちらを指標にすると、反応が期待できないことになります。
この論文によるとIGF-1が72以上は低反応の指標となるようです。つまり、FSHがさほど高くなくても、IGF-1が高い場合はエストロゲンでIGF-1を下げてから誘発を開始したほうがよい、ということになりますね。