新型コロナウイルス治療薬の現状

新型コロナウイルス治療薬の現状

医師の田口早桐です。

今回は、世界中を大いに席巻している新型コロナウイルス<COVID-19(SARS-CoV-2)>についての最新の話題です。

皆さんもご存知のように、新型コロナウイルスには現状、特効薬やワクチンはありません。

ワクチンについては、順調にいって臨床で使われるようになるのは、日本やアメリカの専門家及び政府の話では早くて1年半くらい先になりそうです。

一方、治療薬については、それを特効薬と呼べるようになるかどうかは別にして、臨床的に有用な治療薬候補がいくつか発見されており、臨床研究の結果が揃いつつあります。

その中で、期待されていた抗HIV薬については、つい最近のNEJM誌上で抗ウイルス効果が否定されました。
他にも、レムデシベルなどが期待されますが、いろいろ論文等を読んでいると、どうも、日本発の薬であるアビガンは感染6日までに投与されるならば、相当な抗ウイルス効果があり、良く効くように思います。
本格的に広く臨床で使われるのは、少し先になるかもしれませんが、この感染症で重症化しやすい高齢者の方々にとっては朗報といえるでしょう。
オーク会の別部門ではデイサービス事業所も運営しており、各事業所では徹底した感染防御策を講じているためもあり、利用者様には安全にご利用いただいているようですが、臨床効果のある薬については、できるだけ早く使用承認されてほしいと思います。

ただ、このアビガンの使用については、当院の柱の事業である不妊治療分野における男女カップルへの投与には、少し悩ましい課題があります。
まず、この薬については、<妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと>と、されています。
動物実験において、臨床曝露量と同程度又は下回る用量で初期胚の致死(ラット)及び催奇形性(サル、マウス、ラット及びウサギ)が認められているからです。
さらに、アビガンは精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、 投与期間中及び投与終了後 7日間まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること、また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせないことが開発メーカーから注意喚起されています。

早晩、この薬が承認され、臨床研究段階である今よりも幅広く臨床で使用されるようになったとき、妊活及び産活カップルの方々については、我々専門医が注意深く指導する必要が生じると考えていますが、なるべく妊活及び産活カップルの方々に影響が生じない、抗ウイルス薬の登場が待ち望まれます。