男性の禁欲期間がARTの生産率にどう影響するか

男性の禁欲期間がARTの生産率にどう影響するか

医局カンファレンスです。 

男性の禁欲期間がARTの生産率にどう影響するかについての論文を紹介します。(Fertility and Sterility Vol 108 No6,2017,p988-992) 

後ろ向き研究です。 1031のARTサイクルでグループⅠ(禁欲期間2-7日)、グループⅡ(7日以上)、 グループⅠa(2-4日)、グループⅠb(5-7日)としました。患者背景に差はありませんでした。
受精方法は顕微授精かスプリット(顕微授精と体外受精)のどちらかです。

生産率、妊娠率、着床率ともにグループⅡと比較し、グループⅠで有意に高い結果になっていました。またその中で生産率については、グループⅠaはグループⅡよりも有意に高いが、グループⅠbとグループⅡとの間に有意差はありませんでした。
その他の結果では、高速直進精子がグループⅠで有意に高かったのと、採卵数、移植胚数、受精率 、良好胚率、流産率では有意差はありませんでした。 

(解説)
現在推奨されている禁欲期間は2-7日となっており、この期間に採精することがより良い精子を使用でき妊娠率が高くなることが証明された論文です。

以前より、禁欲期間が長いと酸化の影響を受け死滅精子が多くなったり、白血球によって質が悪くなりDNAダメージが増えると言われています。さらにこの論文では、2-4日と5-7日でさらに検討しており、2-4日の方がより生産率が高いことも証明しています。
また、受精率や良好胚 率は変わらないがグループⅠで生産率や妊娠率が高くなっていることで、禁欲期間が短いと妊娠可能な胚の獲得率が高いことが言えます。

ただこの論文では、40歳以上、凍結精子や精巣内精子の使用、体外受精のみ、採卵数3個以下は除外しており、比較的若年で卵巣機能がよい条件下での証明と言えます。 短い(1日以内)の禁欲期間との比較はありませんが、できるだけ短い期間がいいという事がわかりました。精子数が少ないから禁欲期間を延ばした方がいいのではとおっしゃられる患者さんもおられますが、精子一つ一つの質を考えると、少なくてもより良い質になるように延ばしすぎないことが重要だと思います。