44歳以上の着床前診断

44歳以上の着床前診断

医局カンファレンスです。

44歳以上の着床前診断についての論文を紹介したいと思います。(Fertility and Sterility vol 107,No.5,May 2017 p1173-1180)

137人の44歳から47歳までの137人を対象に体外受精行い、胚盤胞の状態で着床前診断を行いました。
150周期中102周期で胚盤胞まで到達し(68%)、21周期で正常な胚盤胞(14%)が認められました。
全胚盤胞数は187個で正常胚は22個(11.8%)でした。
21個の正常胚を移植し、13例妊娠に至り(61.9%)、12例が分娩となりました。
1移植あたりの分娩率は57.1%、1周期あたりは8.0%、患者全体の8.8%でした。1周期あたりの年齢別の分娩率は44.0~44.9歳10.6%、45.0~45.9歳2.6%でした。46歳以上では正常胚がありませんでした。

また、取れた成熟卵の個数別に検討もされています(1-2回)。
①1-5個②6-10個③11個以上で検討しています。
1周期あたりの胚盤胞率、正常胚率は①よりも③が有意に上昇していました。
1周期あたりの分娩率も①3.8%②7.3%③24.0%と成熟卵がとれれば上昇する傾向になっていました。

(解説)
年齢とともに染色体異常による妊娠率の低下、流産率の上昇があります。
自然での妊娠率は40歳で23%、43歳で20%、45歳で10%程度ありますが、流産率が40歳で40%、42歳で50%、45歳以上では70-80%になると言われています。

日本での体外受精におけるデータでも妊娠率は40歳で24%、43歳で13%、45歳で7%、流産率は40歳で17%、43歳で27%、45歳で30%になります。体外受精においても高齢の方の治療に苦慮するところです。

今回のデータから成熟卵数が1-5個でも胚盤胞到達率は53.2%ありました。
よく成熟卵が少ないと胚盤胞に到達する胚も少なくなり、移植できない可能性を考慮し、初期胚凍結を提案することが多いのですが、この論文の結果では半分が胚盤胞になること、そのうち12.1%は正常胚であるということがわかりました。
1周期あたりの正常胚率は成熟卵が多いほど高くなる傾向がありますが、正常胚率(正常胚/全胚盤胞)は①~③の採卵数で有意差はありませんでした。

40代になっても正常胚はあり、特に卵巣機能の比較的良好な方にとっては、胚盤胞まで培養し、胚の選別を行うことが1回の流産率を低くし妊娠率を上昇させることに繋がることが言えます。
また、採卵個数が少なくても、採卵回数は必要かと思いますが、正常胚はあり妊娠する可能性は十分にあるということです。