チョコレート嚢胞におけるアルコール固定術

チョコレート嚢胞におけるアルコール固定術

医局カンファレンスです。

チョコレート嚢胞におけるアルコール固定術に関するメタアナリシスがでていたので紹介します。
(Fertility and Sterility Vol.108,No.1,July 2017)

チョコレート嚢胞に対してアルコール固定術を行い、再発、症状、生殖機能への影響、副作用を18の過去のデータをもとにまとめたものです。

再発率は0~62.5%、あるデータでは固定時間が10分未満で62.5%再発しており、10分以上での再発率は9.1%でした。内膜症による痛みについては68~96%が軽減しています。

体外受精の成績としては、アルコール固定後の妊娠率は20~57%で、採卵数は腹腔鏡手術に比べて増えますが、臨床妊娠率はややアルコール固定後の妊娠率のほうが高いものの有意差はありませんでした。
また、アルコール固定術をしてもしなくても、採卵数、臨床妊娠率はかわりませんでした。
副作用は腹痛1.8%~15.3%、発熱5.5%、アルコール中毒3.8%、嚢胞内膿瘍2%でした。

まとめると、
① アルコール固定術においては10分以上かけることによって再発率が低下する。
② 腹腔鏡下手術よりも採卵数は増加するが妊娠率はかわらない。
③ アルコール固定してもしなくても採卵数および妊娠率はかわらない。

(補足)
固定時間を10分以上かけることで手術による再発率とほぼ同等に低くなるようです。
また、今回のメタアナリシスでは妊娠率は変わらなかったのですが、過去の報告では、再発したチョコレート嚢胞に対しアルコール固定術か腹腔鏡手術行い、採卵数、妊娠率を検討した結果、アルコール固定術のほうが採卵数、妊娠率が有意に高い結果になっていました。元々卵巣機能が低下している人や再発時に再度手術をすることは、さらなる卵巣機能低下をきたし、妊娠率の低下に繋がると思われます。

この論文では、チョコレート嚢胞に対して、アルコール固定術は手術に代わる選択肢のひとつになりうるが,体外受精で明らかに良好な結果がでてはいないので、症状がある患者や卵巣機能が低下している患者には有効な手段といえるのではと締めくくっています。

当院でも3-7cmまでのチョコレート嚢胞がある方で、卵胞発育が少ない方や採卵時に穿刺しないといけないような場所にある方(腹膜炎をおこすおそれがあるため)はアルコール固定術をすすめています。
この論文で有効とされているアルコール量や固定時間を以前から取り入れて行っています。
症状の軽減、そして卵巣機能の低下を防ぎ、採卵数を増加させることで少しでも妊娠に結びつけばと考えています。