反復着床不全患者に対する着床率と妊娠率の改善

反復着床不全患者に対する着床率と妊娠率の改善

医局カンファレンスです。

反復着床不全患者に対して子宮鏡と短期間Cu-IUD(子宮内避妊器具)をいれることで着床率と妊娠率が改善したという論文が出ていました。(fertility and Sterility vol.108,No1,July 2011,p55-61)

少なくとも良好胚が2回着床しなかった患者に対して子宮鏡検査後にCu-IUDを2周期挿入し妊娠率の改善につながったかを検討したものです。子宮内腔にポリープや筋腫、癒着が認められた場合は手術後Cu-IUDを挿入し、すべて融解胚移植をおこなった結果です。

結果は440人の患者の平均年齢、BMI、不妊原因に有意差はありませんでした。Cu-IUDをいれたほうが着床率(29.29%vs.16.56%)、化学妊娠率(53.25%vs.41.38%)、臨床妊娠率(45.13%vs.26.44%)が有意に高い結果となっていました。

(補足)
今回のデータをみると、Cu-IUDを入れた患者では子宮内膜炎がある患者の割合が多く、Cu-IUD入れなかった患者ではポリープがあった患者の割合が多かったです。患者背景でのかたよりがみられます。
しかし、明らかにCu-IUD入れたほうが臨床妊娠率は高い結果となっていました。

また、Cu-IUD抜去後もしくは子宮鏡検査後の初回の臨床妊娠率もCu-IUDを入れたほうが有意に高かったです。
ただ今回の論文では、ポリープや癒着の手術後にCu-IUDをいれたかいれなかったかでの着床率や妊娠率の検討はされていませんでした。

筆者は子宮鏡検査だけでも妊娠率の改善がみられたという報告があるが、Cu-IUDを入れることで子宮内膜に炎症を惹起することによって妊娠率のさらなる上昇が得られたと述べています。
また、今回使用している銅イオンを放出するIUDは持続的に子宮内で銅イオンを放出することで炎症性サイトカインを生み出し、着床を促進するのではと考えています。

当院でも着床不全検査をおこなっています。子宮鏡検査と内膜生検の両方する検査です。
内膜生検も炎症反応を引き起こすために免疫システムを刺激することによって、子宮の受精卵を受け入れる能力を高めさせるという理由でおこなっています。
実際、検査後の移植で着床される確率が検査しない方に比べて約3倍になったという当院でのデータがあり、良い胚を移植しているにも関わらず着床しない方にお勧めしています。