反復不着床と慢性子宮内膜炎

反復不着床と慢性子宮内膜炎

医師の船曳美也子です。

Prevalence of chronic endometritis in repeated unexplained implantation failure and the IVF success rate after antibiotic therapy Ettore Cicinelli, Itay Human Reproduction, Vol.30,No.2 pp.323-330, 2015

当院でも、反復不着床の方に、子宮鏡検査を用いて、慢性子宮内膜炎の有無の診断を行っており、必要があれば、抗生物質を投与しています。
また、炎症がなくても、内膜再生術を加えることで、以後数周期の着床率があがっています。

子宮内膜は月経周期毎にはがれて新しく再生されるのですが、慢性子宮内膜炎とは、はがれずのこっている基底部の部分に慢性炎症の状態にあること、が定義となります。

2009年から2012年の間の、反復着床不全、つまり、2~3周期胚移植不良(イタリアなので、新鮮胚移植のみ3個まで可能です)、または、形態良好胚を11個以上もどしても着床しなかった256例のうち、肥満因子、男性因子、加齢因子、内膜症因子などをのぞいた106例について分析しています。

手順としては、まず、子宮鏡にて慢性子宮内膜炎(CE:chronic endometritis)疑いを診断。
疑われた方に対して、組織を一部とり、CEを診断します。

子宮鏡でCE疑いと診断された70名のうち61名が、組織診でCEと診断されました。
CEと診断された組織を細菌培養したところ、反復不着床で検査対象になった106名のうち45%と高率に陽性がでていました。

組織診でCEと診断された方には、抗生物質を投与したところ、治った群と治らなかった群では有意に、治療後6か月以内の着床率、出産率が改善しています。

つまり、反復不着床のかたで、CEを見つけるには、まず子宮鏡検査が有効なこと。
そして、組織診でCEと診断されたら、抗生物質の内服が有効であること、が証明された論文でした。
子宮鏡は技術も必要ですし、組織診はやや侵襲性があるのですが、やはり、有効な検査であることが確認されました。

ちなみに、子宮鏡でCEを疑う所見としては、マイクロポリープの存在、多発ポリープ様内膜、間質浮腫、局所および、びまん性充血、です。