新鮮周期と融解胚移植の場合の妊娠率

新鮮周期と融解胚移植の場合の妊娠率

医師の田口早桐です。

Does a frozen embryo transfer ameliorate the effect of elevated progesterone seen in fresh transfer cycles?
Fertility and Sterility, in press

ASRM、アメリカ生殖医学会で先月発表した際に、同じセッションで発表されていた先生の論文です。

新鮮胚移植より凍結融解胚移植のほうが着床率が良いことが知られています。そのひとつの原因として、新鮮胚移植の際は採卵のために排卵誘発をするために早くから黄体化が始まってしまうことがあります。黄体化の有無は、黄体ホルモン(プロゲステロン)を測定すれば分かります。採卵に向けてのトリガー(36時間前に打つ注射もしくは点鼻薬)の際にプロゲステロンを測り、その値が高ければ黄体化が始まっていると考えられます。その場合、同じ周期での胚の着床率が悪くなることが知られています。

どうしてプロゲステロンが早くに上がることが悪い影響を及ぼすのかについて、いろいろ言われています。
その周期に採卵する胚のクオリティーを下げる、とか内膜の受容性を下げる、など。
ただ、もし内膜ではなく胚に対しての悪影響が問題なのであれば、その周期で採卵した卵は、後に融解胚移植をしたとしても同じく着床率や妊娠率が下がるはずです。

著者らは、新鮮周期とその後のそのときの受精卵をホルモン補充周期での融解胚移植をした場合の妊娠率を調べました。プロゲステロンの値が高いと新鮮周期での着床率が下がるが、融解胚移植の着床率は下がらないことが分かりました。また、トリガー時のプロゲステロン値が2以上になるとその影響が顕著であるとわかりました。つまりプロゲステロンの上昇はその周期の内膜に悪い影響があるのではないかということです。

当院でも新鮮胚移植をするのは限られた症例のみになってきています。
新鮮周期にこのまま移植して早く妊娠したいという方もまだ多くいらっしゃいますが、とくに発育卵胞が多い場合は卵巣過剰刺激症候群を悪化させないためにも、一旦凍結して違う周期に移植したほうが良さそうです。