出版バイアス

出版バイアス

医局カンファレンスです。

ある検査や薬剤が、診断や治療に有効かどうか調べる方法のひとつに、ランダム化比較試験(randomized controlled trial、RCT)という研究法があります。

RCTは計画・遂行が非常に大変ですが、現行の臨床試験の方法のなかでは、最も客観性が高い結果が得られるもののひとつとして、重視されています。

医療従事者は、こういった貴重な研究の結果が、学術集会で発表され、査読(2011-08-23のブログをご参照ください)のある学術誌に受理・出版され、公平に認められていくことを願っていますが、現実にはなかなかそううまくはいきません。
その原因のひとつに出版バイアスがあります。
薬AとBで「差が出た臨床試験では、差が出なかった臨床試験よりも投稿されやすく、また査読をパスしやすく論文として受理されやすい」という現象です。

最近、不妊症の領域でも出版バイアスが存在することが、ヨーロッパ生殖医学会から報告されました (Human Reproduction 2011;26:1371-1376.)。
学会の2003年・2004年の年次集会で発表されたRCTのうち差の出た試験(特に新薬・新検査に軍配があがった場合)と差の出なかった試験を比較すると、前者の査読論文採択率は後者のオッズ比2.5倍だったそうです。
また出版されるまでのスピードも、速かったとのことです。
学術集会での発表方法にはおもに口頭プレゼンテーションとポスター・プレゼンの二つがありますが、このレポートによると、口頭発表のほうがポスター発表よりも、論文になる頻度が高かったとも書かれています。
街頭演説を聴くほうがマニフェストを読むよりも、より強い印象を残すというと語弊があるでしょうか。

昨今、同指向の複数の研究を集めて統計学的手法を用いて、より大規模な研究として解析するメタアナリシスと呼ばれる研究方法が盛んに行われています。この解析の過程に出版バイアスが紛れ込んでくれば、本来は差のない薬AとBの間に差が生まれてしまう、というような恐れがあるわけです。

このような報告が学会から出されるということは、専門家も出版バイアスを懸念しているということの現れです。