AIのフレーム問題

AIのフレーム問題

先日、IVFラボへのAIの導入の打ち合わせをしていたら、培養士の一人から

「あの、AIの『フレーム問題」ってもう解決してるんですか?」と尋ねられました。

(確かに「フレーム問題」ってあったよな。今、どうなってるんだろう?)

培養士からAIの本質について質問され、意表を突かれました。

ちなみに「フレーム問題」の有名な例は、こんな感じです。

洞窟の中から時限爆弾で爆発しないようにある物を取ってくるようにロボットに伝える。しかし、取ってくる物の上に爆弾が置いてあった。人間なら絶対にそんなことはしないが、ロボットはそのまま持ってきて爆発する。

人間には話の枠組み(フレーム)がわかるけど、コンピュータにそういう判断をさせようとすると無限のパターンを定義しておかなければならない。人間には簡単な大局的判断を、条件分岐のプログラムで書こうとすると、そうなってしまう。

しかし、AIにも状況や文脈に沿った判断ができることは、今や誰でも知っています。条件分岐ではなくて、ベクトルで表現し、ニューラルネットワークの重み付けすることでコンピュータも意味を理解する。

一方で、「それは人間の思考とは違う」という議論も延々とあります。

とりあえず質問には、「一応、解決していると言えるんじゃないかな」とお茶を濁しておきました。

それから数日後、本棚の整理をしていて、この本に目が止まりました。1990年の刊行で学生時代に買ったものです。

日本のAI研究のパイオニアである松原仁が、弱冠31歳にしてこの本の中で予言していたことがすべてだと思います。

「一般化フレーム問題は人間にもコンピュータにも決して解決できない。人工知能研究で考えるべきなのは、なぜ人間はあたかも一般化フレーム問題を解決しているかのように見えるのかという疑似解決の問題である」

さすがですね。本のタイトルには「哲学が必要」とありますが、むしろ変にこねくり回して考えるのではなく、そもそも人間だって完全じゃないという当たり前を素直に認めるところから出発している。

生殖医療でも似たようなところがあり、顕微授精などは「受精メカニズムは複雑で、まだまだ解明されていない」と多くの研究者が色々と議論している間に、精子を注入してしまったらうまくいったわけです。

フレームを決めることが思考とはいえ、時にはフレームを超えて考えることが大事。

培養士のフレームを超えた質問に、改めて気付かされました。


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