Oak Journal Review:連続イオノフォア処理による受精率と胚盤胞到達率の改善

Oak Journal Review:連続イオノフォア処理による受精率と胚盤胞到達率の改善

こんにちは。検査部の鈴木です。

5月9日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewにて、私が紹介した次の論文の内容を短くまとめた動画を公開いたしました。

Double ionophore application in cases with previous failed/low fertilization or poor embryo development.
Shebl O, Reiter E, Enengl S, Allerstorfer C, Schappacher-Tilp G, Trautner PS, et al.
Reprod Biomed Online 2021;44(5):829–37.

こちらの論文では、カルシウム・イオノフォア処理を行って卵子内のカルシウム濃度を高めることで卵子を活性化させても受精率や胚盤胞到達率が十分改善しなかったカップルに対し、カルシウム・イオノフォア処理を2回行うことで、1回のみの場合に比べて受精率と胚盤胞到達率が改善するかを検討しています。

卵子と精子が出会い卵子内に精子が入ると卵子が活性化し、卵子内のカルシウム濃度が一時的に上昇して受精が成立します。その結果、受精に伴う様々な反応が引き起こされます。
例えば多精子授精を防ぐように透明体が変化するのもその一つです。また、細胞内では、細胞分裂の準備も始まります。

患者様によっては顕微授精により確実に精子を卵子に注入したとしても、受精率が低いことや、受精しても細胞分裂が途中で止まってしまう場合があります。

そのような場合には、今回紹介した論文で使用されているカルシウム・イオノフォア処理などにより人工的に卵子内のカルシウム濃度を上昇させる卵子活性化が有効です。
なお、この人工的な卵子の活性化は、2022年4月から保険が適用可能となりました。

ただ患者様の中には、カルシウム・イオノフォア処理を行ってもなお受精率などが改善しないケースがあります。

ヒトなど哺乳類では、受精に伴うカルシウム濃度の上昇は1回ではなく、周期的に何度も上昇するカルシウム振動を起こします。しかし、カルシウム・イオノフォア処理では、一過性にカルシウム濃度を上昇させるだけで、振動とは言えません。そのため1度の処理では十分活性化されないことがあるのかもしれません。

そのような場合、顕微授精後にカルシウム・イオノフォア処理を2回行うことで通常のカルシウム・イオノフォア処理にくらべて受精率や胚盤胞到達率が改善するのでしょうか?

詳しい内容は、こちらの動画でご確認ください。