不妊治療の「43歳以上」問題

不妊治療の「43歳以上」問題

医師の田口です。

菅前首相の公約によって、不妊治療の保険適用への動きが一気に加速されたことは、先のブログ記事で書きました。今回、さらに43歳以上にも何らかの形で補助をしていくべきという提案をされています。4月3日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演して発言されています。

以下、TV番組内容に関する私なりの要旨です。

 

菅前首相:大事なのは少子化対策だ。戦後のベビーブームの時、団塊の世代の時は年に250万人から260万人ほど生まれていた。直近では84万人で、3分の1だ。体外受精など不妊治療で生まれた人は約6万人いる。14人に1人は不妊治療等で生まれている。不妊治療を受けたい人はたくさんいる。ようやく4月1日からスタートした。年齢制限については大変な議論があったが、専門家の意見に基づいて決めた。政治判断ではない

橋下氏(元大阪府知事、元維新の会代表):保険適用は大賛成だ。ただ、年齢制限はどうしても引っ掛かる。専門家は科学的根拠といって子どもが生まれる率で判断している。でも、43歳以上の女性でも体外受精で子どもが生まれる可能性があるのであれば(対応してほしい)。菅さんは機会の平等は与える、チャンスは皆に与えるというのが政治信条の一番の柱だった。仮に財源などの問題により43歳でラインを引いたとしても、可能性のある人のチャンスを閉ざすのは、菅さんの政治信条とは違うと思う。助成金でもいい、所得制限をかけてもいい。高額所得者は自費でもいい。43歳以上の方も不妊治療をやりたいと思う人には何か助成をするような制度をぜひつくってもらいたい

菅前首相:所得制限は今まであったが撤廃した。年齢制限について橋下さんから意見をもらった。私もかなり気になって当然、専門家と議論した。そのうえでの(43歳未満の)年齢制限だった。ただ、これから(橋下氏が指摘した)所得制限なども考える中で機会を与えていくことが大事だと思う。

橋下氏:43歳以上の女性にもチャンスを与えていくような政策を考えていただけるということか。

菅前首相:考えていきたい。

 

専門家としては、やはり、治療の有効性を念頭においてしまうため、43歳という年齢を設定することになったと思われます。それに比べ、政治家というのは、できるだけすべての人に機会を与えることを信条とされているのだということに、感銘を受けました。強い信念があるのだと思います。

インタビューでは、ほかにウクライナ情勢や防衛戦略についても論じられていましたが、その中にあって、このような対象者がとても多い訳ではない事柄に関しても心砕き、対策を考えているということはすごいことだなあと思っています。

43歳以上で治療を受けられている方も多いです。年齢でスパっと切ってしまうのは、現場にいる我々でもつらいことです。何らかの形でサポートがあれば、本当に救われます。