女性のBMIと人工授精の成績との関連

検査部の奥平です。

ボディマス指数(BMI)の上昇は、男女ともに生殖に関する問題を含む様々な健康問題を引き起こす可能性があります。女性の場合、肥満は月経不順、無排卵、不妊、妊娠中の合併症の原因となることが知られています。また、過去のメタアナリシスの結果では、肥満は体外受精による出産率に悪影響を及ぼすことが報告されています。
今回は、BMIが子宮内人工授精の治療成績に影響を与えるかどうかを検討した論文を紹介します。

Effect of body mass index on intrauterine insemination cycle success.
Fertility and Sterility. 2021 Jan;115(1):221-228. doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.07.003.

対象・方法
2009年7月から2018年12月の間に、アイオワ大学病院(アメリカ)で行われた新鮮精液による子宮内人工授精周期を対象とした後ろ向きコホート研究です。1,306人の患者由来の合計3,217回の人工授精周期(ドナー精液は対象外)が研究に含まれています。女性のBMIに応じて、標準体重(18.5–24.99 kg/m2)、過体重(25–29.99 kg/m2)、肥満(≥30 kg/m2)の3群に分け、出産率などを比較しています。なお、BMI 18.5kg / m2未満の患者では周期数が少ないため、本研究からは除外されています。

結果
研究に参加した女性の平均年齢は32.42 ± 4.70歳(範囲 20–47歳)、平均BMIは27.5 ± 6.9(範囲 18.5–53.1)でした。周期のうち47%が標準体重の女性で、24.1%が過体重の女性、28.3%が肥満の女性でした。
人工授精時の総運動精子数は、すべてのBMI群で同程度でした。
BMIが25~29.99kg/m2または≥30kg/m2の女性は、BMIが正常な女性と比較して、出産率に差はありませんでした。また、世界保健機関(WHO)の基準で肥満女性をさらに分類し(肥満度クラスI~III)、出産率についてBMIが正常な女性と比較しましたが、どの肥満度クラスとの間にも差はみられませんでした。
BMIが≥30kg/m2の女性は、BMIが正常な女性に比べて生化学的妊娠の可能性が高かったです(調整OR 2.37、95%CI 1.33~4.25)。

解説
これまでの研究から、肥満が人工授精の成績に影響するかどうか、またどのように影響するかについては様々な結果が出ています。過去のいくつかの研究においても、肥満は排卵誘発による人工授精治療に悪影響を及ぼさないことが報告されています。無排卵や不妊などの肥満女性によくみられる問題は、排卵誘発剤や過剰排卵剤の使用によって克服できるかもしれません。本研究でも8割以上の症例で何らかの排卵誘発剤を用いており、これらの薬剤は、BMIが正常な女性と肥満の女性が人工授精を行う際に、妊娠する確率を等しくするのに役立つ可能性があります。
正常なBMIの人に比べて肥満の人では分布容積が大きくなるため、様々な薬剤の薬物動態や、β-hCGやプロジェステロンなどの内因性および外因性ホルモンの測定値に影響を及ぼすことがわかっています。今回、肥満の女性では生化学的妊娠の可能性が高まることがわかりましたが、著者らは、肥満女性ではβ-hCGとプロジェステロンの濃度が相対的に低く、早期の妊娠喪失につながっているのではないかと推測しています。将来的には、人工授精治療を受けている肥満女性において、プロジェステロンを補充することにより、生化学的妊娠率に与える影響を検討する必要があるとも述べています。