女性のBMIと胚の染色体数異常との関係

女性のBMIと胚の染色体数異常との関係

検査部の奥平です。

前回のブログに引き続き、ボディマス指数(BMI)と生殖に関する話題です。
つい最近、女性のBMIと胚の染色体異数性との関連を検討した研究が報告されたので、ご紹介します。

Body mass index is not associated with embryo ploidy in patients undergoing in vitro fertilization with preimplantation genetic testing.
Fertility and Sterility. April 04, 2021. DOI:https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2021.02.029

対象・方法
研究デザインは後ろ向きコホート研究です。2017年1月から2020年8月までの間に、アメリカの1施設で着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を実施した初回の体外受精周期を受けた患者が対象となっています。不妊治療開始時に女性の身長と体重が記録されました。1750人の患者が研究に参加し、BMIに応じて、標準体重(BMI 18.5–24.99 kg/m2、1254人)、過体重(BMI 25–29.99 kg/m2、351人)、肥満(BMI ≥30 kg/m2、145人)の3群に分け、胚の染色体異数性を比較しました。低体重(BMI <18.5 kg/m2)の患者および新鮮胚移植を受けた患者は研究から除外されました。

結果
生検胚盤胞の数は、3群間で差はありませんでした。
正倍数体胚の数、異数性胚の数およびモザイク胚の数について、過体重および肥満の患者群では、標準体重の患者群と比較して、統計的に有意な差は認められませんでした。
患者の年齢を調整した線形回帰モデルにおいて、BMIクラスと異数性胚の数や割合との間に関連はみられませんでした。
35歳未満、35~40歳、40歳以上に分類された患者のサブグループ分析でも、同様にBMIクラスと胚の異数性との間に関連はみられませんでした。

解説
肥満は過去数十年の間に世界中で増加しており、今回研究が行われたアメリカでは女性の約40%、世界では15%が罹患していると言われています。そのため、不妊症患者における肥満の存在と、その不妊治療への臨床的影響は避けられません。実際に、肥満と出産や流産などの妊娠成績との間にはネガティブな関係があることはよく知られています。動物を用いた研究では、食事によって誘発された肥満により、卵子の減数分裂の異常が起こることが示されています。また、ヒトを対象とした研究でも、肥満女性の卵子に紡錘体異常や染色体の不整列が観察されています。
よって、本研究の目的は、女性のBMI値の増加と胚の異数性との間に関連性があるかを評価することでした。これまでに、PGT-Aで体外受精を受けた患者の小規模な研究では、BMIと正倍数体胚との間に有意な関連は無いと報告されています。しかし、この研究はサンプルサイズが小さく、肥満患者は22人しか含まれていないという制限がありました。そこで本研究では、サンプルサイズを大きくし、さらには、BMIと胚の異数性やモザイク胚の分析を追加しています。その結果、BMIと異数性胚、モザイク胚、正倍数体胚の数または割合との関連は示されませんでした。これらの結果は、肥満が妊娠成績に及ぼす悪影響は、胚の異数性の状態とは無関係であることが示唆されました。これにより、PGT-Aでは検出できない方法で、染色体以外の要因が卵子の質や胚の発育に影響を与えている可能性があります。著者らは、肥満がエピジェネティクスおよびメタボロミクスのプロファイルに変化をもたらし、その結果、卵子の品質が低下するのではないかと考えています。