肥満女性は流産のリスクが高い

胚培養士の奥平裕一です。

コロナ禍において、外出自粛や在宅勤務の増加、スポーツイベントの中止などによる運動不足、自粛期間中の精神的ストレスや暴飲暴食によって肥満化が懸念されています。実際に「コロナ太り」なる言葉が誕生し、多くの方が以前よりも体重が増えたという調査結果も報告されています。肥満による新型コロナ感染症の重症化も怖いのですが、生殖分野においても、やはり肥満はよくありません。いくつかの研究で妊娠率の低下と、肥満による配偶子や胚、子宮内膜環境への悪影響との関連が示されています。その中から今回は、女性のBMIと流産のリスクなどの関連を調べた最新の論文をご紹介します。

Female obesity increases the risk of miscarriage of euploid embryos.

Fertility and Sterility. In Press. DOI:https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2020.09.139.

対象・方法

2016年~2019年に、スペインの複数の施設で実施された凍結融解胚移植3480周期を対象とした後ろ向きコホート研究です。全ての症例で、胚盤胞期(培養5もしくは6日目)に着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を行っており、正倍数体胚のみ移植しています。女性をBMI(kg/m2)に応じて4つのグループ(< 18.5:低体重、18.5-24.9:正常体重、25.0-29.9:過体重、≥ 30.0:肥満)に分け、流産率、着床率、妊娠率、出産率などを比較検討しています。

結果 着床率、妊娠率、および臨床的妊娠率は、肥満の女性(BMI ≥ 30.0)では低下する傾向があったが、4つのBMIグループ間で有意な差はありませんでした。しかし、肥満の女性では、高い臨床的流産率により流産率が有意に増加し、出産率は有意に低下しました。

ロジスティック回帰分析では、胚移植あたりの出産率に影響を与える因子として肥満が示されました。また、培養5日目ではなく6日目に胚生検を行うことも出産率を低下させました。他の要因(母体年齢、精子の質、PGT-Aの適応、卵巣刺激方法、胚移植のための子宮内膜準備、染色体分析の方法)は出産率に影響を及ぼすことは認められませんでした。

解説

本研究は、PGT-Aを用いて解析された正倍数体胚の移植後の妊娠成績に対する女性のBMIの影響について、これまでに行われた最も広範な研究です。結果から、肥満女性では、流産率が増加するとともに出産率が低下することが示されました。PGT-Aにより正倍数体胚のみ移植に用いていることから、染色体の数的異常の影響は除外され、肥満による別の悪影響がこの結果の原因であることを示唆しています。詳しいメカニズムはまだ不明ですが、肥満による子宮内膜の受容性の変化、子宮および胎盤の障害などが考えられています。

また、肥満のまま妊娠に成功しても周産期の合併症や難産のリスクがあり、そして、妊娠中にダイエットすることは容易ではありません。やはり、不妊治療を始める前や妊娠前のダイエットが望ましいと思います。当院では、医学的に管理して行う「オーク式・ダイエットプログラム」を提供しております。もし興味がおありでしたらお気軽に医師にご相談ください。

オーク式・ダイエットプログラム https://www.oakclinic-group.com/funin/diet.html