胚の再凍結

胚の再凍結

オーク会検査部です。

以前、精子の再凍結について書かせていただきましたが、今回は胚の再凍結についてお話したいと思います。

単一胚移植が推奨されるようになった2007年頃から生殖補助医療(ART)における融解胚移植周期の割合は年々増加し、今では治療周期の半数近くが融解胚移植、ARTにて出生するお子様の90%近くが凍結胚を用いた移植による妊娠です(日本産科婦人科学会のデータブックhttps://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2018data_20201001.pdf 参照)。

ですので、胚を凍結することに何か懸念を抱かれる方は殆どおられないですが、再凍結となると、胚へのダメージなどが心配になるかと思います。

通常の凍結融解の際でも、融解後に胚の一部が変性してしまうことがあるのですが(写真の矢印で示した部分)、再凍結した胚ではその頻度が少し高いかもしれません。ですが、胚全体が駄目になってしまうというようなことはありません。

再凍結の事例は少なく統計解析をするほどのデータ数はないのですが、妊娠率は凍結胚と再凍結胚の間で差は出ないかなという印象です(2019年分の集計では凍結胚38.6%、再凍結胚33.3%)。

グレードが良くない分割期胚(Day2~Day3)や初期胚盤胞が複数ある場合、「融解・培養をしても胚盤胞に到達せず、移植キャンセル」という事態を避けるために、移植日に合わせて複数の胚を融解・培養するという方針を取ることがあります。そうすると、嬉しい誤算というのか、胚盤胞到達率が思いのほか良くて、移植胚以外にも胚盤胞ができて再凍結することもままあります。

下の写真の胚盤胞は全て、再凍結を経て融解胚移植を行ない妊娠に至ったものです。また、この中のひとつについては既に予定日を迎えられ、無事にご出産されたとご連絡をいただいております。 2回凍結・融解して多少の変性があっても赤ちゃんになれるとは、改めて考えると不思議な気もしますが、胚って逞しいなと思います。