ランダムスタート法での採卵

医師の船曳美也子です。

最近ランダムスタートが排卵誘発で用いられます。特に、がんの治療前の卵子凍結や、卵巣予備力低下の方に対する排卵誘発では主流になりつつあります。

今回は、このランダムスタート法の理論についての論文です。

Ovariann follicular waves during the menstrual cycle: Angela Baewrald,Ph.D.

Fertility and Sterility Vol.114 No.3 Spetember 2020 p443-455

成熟卵子でないと受精しないので、採卵の基本は、『成熟卵子をとる』ことです。そして、排卵直前でないと卵子は成熟しません。ですが、排卵してしまってはとれません。ですので、排卵抑制剤を使用しつつ、排卵誘発剤で卵巣刺激し、18ミリ(15ミリ~)以上の卵胞ができれば、成熟させるトリガーを行い、排卵直前の卵子をとる、ということが基本になります。

卵子の元はうまれた時点ですべて作りきられ、細胞分裂も開始した時点で、休眠にはいっています。卵子の元の細胞が動き出すのが、排卵の数ヶ月前。月約1000個の卵の元が動きだすといわれています。そのうちほとんどが吸収され、月経時にみえる4~6ミリの小卵胞のいくつかのうち一つが同周期に排卵する、という考えが、Cyclic Recruitment Theoryです。

その理論にそって、一般的な排卵誘発は月経3日目より排卵誘発剤を使用します。

ですが、超音波や実際卵巣手術での細胞カウントで、月経と月経の間には、2~3回のリズムをもって、卵胞発育はあるのだ、ということがわかってきました。そのうちの1回が排卵につながっているようです。これをFollicular Wave Theoryと呼んでいます。つまり、いつの時点でも、育つはずの卵胞があるということです。その考えにもとづいておこなわれるのが、ランダムスタート法です。どの時点からでも、排卵抑制しながら、排卵誘発をおこなって卵胞を育てる方法です。今までのところでは、採卵数、妊娠率とも一般的な方法と変わらないため、急ぎの誘発が必要な、がん治療前の卵子凍結や、卵胞数が少ない場合に同じ期間で複数回の卵子がとれるというメリットがあります。