PCO(多のう胞性卵巣)の方の手術時IVM(体外培養)採卵

医師の田口早桐です。

Enhancing the scope of in vitro maturation for fertility preservation: transvaginal retrieval of immature oocytes during endoscopic gynaecological procedures
Human Reproduction 4月号より

この論文では、PCO(多のう胞性卵巣)の方が婦人科の疾患で腹腔鏡などの手術を受ける際に、とくに排卵誘発などせずに膣から採卵します。
当然、HMGなどの注射も打っていないので未熟卵を採取することになります。

手術のために麻酔はかかっているので、痛くはないし、もし卵巣から出血などしてもすぐに止血できます。

採卵した卵子は、IVM(In Vitro Maturation/体外培養)をして、成熟卵になったら(成熟率は47%程度)、
①卵子で凍結→後に受精させて移植(D3移植)
②当日受精(顕微受精)→新鮮胚盤胞移植、
の2つのグループにわけて、それぞれの臨床妊娠率と生産率を比較しています。

158名の手術時IVM用採卵(ここではIVM- surgeryと名づけています)の患者さんの内、46名は上記②のグループ 33名は①グループになりました。(卵子凍結だけして移植しなかった人も多いです。)

全体(①と②)をあわせてみると、採卵周期あたり妊娠率は9.5%、生産率は6.9%でした。
①グループの人も②に対して胚の状態はとくに劣っていませんでした。
卵子凍結でも問題ないということがいえます。

移植あたりの臨床妊娠率と生産率は、①28.6%、19.1%、②69.2%、53.8%となりました。

卵子凍結した①のグループの成績が悪いように見えるかもしれませんが、①はD3移植②は胚盤胞移植です。

そう考えると、通常の体外受精の成績と比べ、未熟卵から体外成熟させた卵子であっても、充分な成績が得られているということが分かります。

ちなみに、①②から生まれた児にもとくに異常はなかったということです。

卵子凍結とIVMは、当院でもよく行う技術です。

当院のIVMは、rescueIVMで、成熟卵を狙っていながら取れてきた未熟卵を培養する技術なので、この論文のIVMとは違いますが、二つの組み合わせをした結果が30%近い妊娠率になったというのは、当院での結果とほぼ同様と考えますので、両方とも有用な手段と思っていいと思います。

ちなみに、PCOの方が採卵すると、それまでなかなか排卵しなかったのに排卵しやすくなるということがあります。卵巣に針を刺すという刺激で状態がよくなるといわれていますが、我々も、採卵後に今までとても不順だった月経が整った例を経験しています。
この論文でも、もともとはPCOで月経がほとんどなかった方が対象なのに、採卵後に卵子や凍結受精卵を使わないまま、35名が自然妊娠されていますので、かなり効果があるのかも知れません。