超小型次世代シーケンサーによるPGT-A(着床前スクリーニング)

超小型次世代シーケンサーによるPGT-A(着床前スクリーニング)

検査の鈴木です。

新年あけましておめでとうございます。

Nature 550: 285–288 (12 October 2017)を一部改変。

こちらのブログで論文を紹介していましたが、今回着床前スクリーニングの論文を紹介する動画を作成いたしましたのでぜひご覧いただけたらと思います。
この論文の次世代シーケンサーが普及すると、着床前スクリーニングにかかる費用は、現在よりもかなり安くなるのではと期待されます。

動画で紹介した論文は、不妊治療分野の主要雑誌Fertility and Sterilityにコロンビア大学のグループが発表したRapid preimplantation genetic screening using a handheld,nanopore-based DNA sequencerです。
この論文では、ナノポアベースの次世代シーケンサー(NGS)を使って着床前スクリーニングが可能であることを示しています。

着床前スクリーニングの主流は、NGSを使用する方法です。このNGSは高額な機械なため、検査費用が高額になるという欠点があります。しかしこの論文で紹介しているナノポアベースの次世代シーケンサーMinIONは、日本円で12万円程度と非常に安価です。
そのため、このシーケンサーが普及すれば、検査費用もかなり抑えられるのではないかと期待されます。

詳しい内容は、ぜひ動画をご覧ください。
動画ページ

ここでは動画の中で説明しきれなかった点を少し説明いたします。

着床前スクリーニングとは

体外受精だけでなく自然妊娠を含め妊娠初期の流産は、染色体が増えたり・減ったりする染色体数の数的異常が主な原因です。そこで体外受精した胚の染色体数を移植前に調べ、染色体数に異常がない胚(euploid胚)を選んで移植することで流産のリスクを抑える、ひいては移植あたりの出産率を改善しようという検査が着床前スクリーニング(PGT-A)です。

PGT-AとPGSの違いは?

PGT-A(Preimplantation Genetic Testing for Aneuploid)とPGS(Preimplantation Genetic Screening)は同じ物です。
以前は着床前スクリーニングをPGSと呼んでいましたが、最近呼び方が変わりPGT-Aと呼ぶようになりました。

先日参加したアメリカ生殖医学会(ASRM)でも、PGSとつい言ってしまいPGT-Aと修正する発表者を何人も見かけました。

ナノポアベースの次世代シーケンサー(NGS)とは

次世代シーケンサー(NGS)は、基本的にノーベル賞を二度も受賞したサンガー博士が開発した方法を大規模にした物です。しかしナノポアベースの次世代シーケンサーは、それとは全く異なる原理により塩基配列を決定します。そのため、次世代シーケンサーのさらに次の世代と形容されることもあります。

DNAがタンパク質の非常に小さな穴を通り抜けるときに、そこを通過する塩基の種類によって流れる電流が変化します。この変化を読み取ることで塩基配列を決定するのが次世代シーケンサーです。イメージとしては、カセットテープに記録された音を再生ヘッドで読み取る感じです。

紹介した論文

Shan Wei, Zachary R. Weiss, Pallavi Gaur, Eric Forman, Zev Williams.
Rapid preimplantation genetic screening using a handheld,
nanopore-based DNA sequencer. Fertility and sterility 2018;
110(5):910-916.e2