卵管の通過性の評価について

卵管の通過性の評価について

医師の田口早桐です。

不妊の原因のひとつとして卵管の疎通性の障害があると言われています。
なかなか妊娠しないという場合、精子の所見と並んで皆さんが真っ先に気にされるのが、「卵管が詰まっていないかどうか」ということです。

卵管は、精子と卵子が出会い、受精をし、受精卵が子宮に到達するのを助ける、妊娠にはなくてはならない器官です。もちろんそこが詰まっていたら、妊娠できません。

そこで、卵管の疎通性を調べるために、造影剤などを子宮側から流してレントゲンや超音波で観察するわけですが、これが一般に考えられているほどには確実な検査ではありません。

まず、閉塞していると診断された場合でも、30%程度に偽陽性(本当は通っているのに通っていないと診断される)があることが知られています。それから、通っていると診断された場合でも、あくまで「子宮側からかなりの圧をかけた状態で」通っているのであり、普段の圧のかかっていない状態ではどうなっているか分かりません。
腹腔鏡でお腹の中をのぞきながら、実際に卵管采(卵管の子宮と反対側の端っこ)から色素が流れてくるかどうかを見るのが一番確実といえますが、その場合でも、圧をかけて行っています。

また、通っていたとしても、卵管が機能しているかどうかは最後までわかりません。
管として閉塞はしていなかったとしても、中にびっしり生えていて受精した卵を着床の場である子宮に移動させる役割を持つ、繊毛の働きが悪かったりすると、妊娠できません。

ですので、不妊検査の一環として卵管の検査を行いますが、結果が「通っていたから大丈夫」なのでもなければ「通っていなかったから駄目」でもないのです。そこをまずはご理解いただきたいと思います。

妊娠のみをターゲットにする場合は、卵管の検査をせずとも、タイミングなり人工授精なりを数周期試してみてから、もしくは初めから体外受精をすればいいのです。
いろいろと詮索して悩むよりも、一番の近道と言えるでしょう。というのは、上で申し上げたように、卵管が通っていますという診断であったとしても、卵管の機能が完全であるということは言えないからです。
タイミングなり人工授精なり、「卵管を介さなければ妊娠が可能にならない」方法で妊娠が成立しなかった、という事実こそが「卵管を介さなくても良い方法」に切り替えるための充分な理由になりえるのです。

では、なぜ、卵管の検査をするのか、と疑問に感じられるかもしれません。
それは、もし卵管が起始部で閉塞している場合、場合により子宮内部からの操作で卵管の疎通性を回復できるかもしれないケースがまれにあるということと、卵管水腫(卵管の腫れ)など着床を妨げてしまう状態がないかどうかを調べる目的があるからです。ただし、卵管水腫に関しては、通常の超音波検査を、卵胞計測目的で何度も行う際に分かることがほとんどですので、卵管造影でないと分からないということはありません。

長々と書きましたが、卵管の検査に関しては、上記のように、あくまで参考としての検査であり結果が絶対ではないことと、超音波等他の所見と組み合わせてこそ意味があるということ、また、妊娠というゴールを考えた場合には、必ずしも行わなければならない検査ではないということをご了解いただきたく思います。