自己抗体(抗核抗体とくに抗セントロメア抗体)と多核受精卵

自己抗体(抗核抗体とくに抗セントロメア抗体)と多核受精卵

医師の田口早桐です。

体外受精をすると通常は翌日に、受精卵の中に2つの核が見えます。
男性側からの核と女性側からの核で、前核といいます。これで正常に受精が行われたとみなします。

もし3つ、4つ、それ以上前核が見えた場合は多核といって異常受精とみなし、受精卵が異常である可能性が高いので、移植から排除することが通常です。顕微授精でない場合は、複数の精子が卵に受精してしまった多精子受精であることも考えられます。

しかし顕微授精の場合は、ひとつの卵子に一匹の精子を注入しているため、多精子受精は起こりえません。にもかかわらず、複数の前核が見える多核受精卵になることがあり、扱いに困ります。多核受精卵が多い人の中で、自分の核に対する自己抗体を持っていることが原因で多核受精卵、つまり異常受精になっている人がいるのではないかといわれています。

当院でも、顕微授精にもかかわらず受精卵のほとんどが多核になってしまうため移植がなかなか出来なかった方がおられました。彼女は抗核抗体の中のひとつ、抗セントロメア抗体が陽性でしたから、その為の治療をして体外受精を行ったところ、今回は全ての受精卵が2前核で正常受精、そのうちのひとつを移植して無事妊娠、経過順調で転院されました。

同じような状態の方は、ぜひ試してみるべきかと思います。