卵子成熟のトリガーとしてHCGとアゴニストの比較

卵子成熟のトリガーとしてHCGとアゴニストの比較

医師の田口早桐です。

Maternal and neonatal outcomes after gonadotropin-releasing hormone agonist trigger for final oocyte maturation in patients undergoing in vitro fertilization Fertility and Sterility Vol.102, No.3, September 2014

刺激周期で採卵する際、卵巣過剰刺激症候群が最も懸念される副作用です。
以前、アンタゴニストが使用出来なかった時代は、採卵のための卵子成熟のトリガーとしてはHCGを使用するしかなく、発育卵胞が多い場合は、卵巣の腫大や腹水貯留などの卵巣過剰刺激症候群を防ぐ手立てはありませんでした。

しかし、今では、少しでも卵巣過剰刺激症候群が懸念される場合は、排卵抑制にセトロタイドなどのアンタゴニストを使用しておいて、発育卵胞が多数の場合はトリガーとしてHCGではなくアゴニスト(スプレキュアやブセレキュア等点鼻薬)を用いて卵子成熟を促します。
HCGと違い、卵巣刺激症候群を悪化させませんので、卵巣の腫れも早く引きます。卵子成熟に対する効果は、ほとんどの場合、同じです。

今回紹介する論文では、卵子成熟のトリガーとしてHCGを使った群とアゴニストを使った群で、胎児の先天奇形の率、妊娠出産に関するトラブルの頻度、において有意差があるかどうかを後方視的に調査した結果が示されています。予想された通り、2群間で、上記についての差は見られませんでした。

我々は、主に遠方からお見えの方で、近くの医療機関で卵胞サイズのチェックを受けている方にはほぼ全例、上記のアゴニストをトリガーに用いる方法での誘発を行っています。
目的は卵巣過剰刺激症候群を避けるためです。胎児、母体に悪い影響がないという今回の報告で、さらに安心して今のプロトコールをご提供することができ、嬉しいです。