精液検査と禁欲期間…その2

精液検査と禁欲期間…その2

こんにちは 多田です。

前回、禁欲期間と精子の状態については、非常に極端な場合を除き、あまり気にしなくてもよいのではないかと書きました。
ところで、禁欲期間が長い場合はどうなのでしょう。精子は精巣で次々に作られています。そのため、古くなった精子を除くことは十分意味があると思われます。
実際に、長時間、精嚢に精子がいる場合、DNA fragmentationの増加など精子の状態の悪化が示されています。

ただ、精子も非常に数が多いので、正常の精子の状態の方であれば、あまり神経質になる必要もないかと思います。実際に、男性は禁欲していても夢精等で定期的に精子を体外に放出しています。
(ただし、10日以上の禁欲では精液所見は悪化するとの報告もあります。
Optimizing natural fertility-a committee opinion.:Fertil
Steril.<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=ferti+2013+631-637>
2013 Sep;100(3):631-7)

ところで、男性不妊の中に精管結紮術をされている方がこられます。
これと同じ病態で閉塞性無精子症の方もこられます。これらの方については少し状況が異なります。
精子の通り道である精管が詰まっているために、精子がまったく体外に排出されません。
そのため、精巣内の精子の状態は悪くなっています。実際に、TESE(精巣内精子回収術)で精子を回収しても、通常より、奇形精子等が多くみられます。

また、精子が体内で死滅する際に体に異物と認識され、精子を攻撃する抗精子抗体が体内に作られ、これがさらに精子の状態を悪化させてしまいます。
治療は、精巣内で精子が作られているので、精子の通り道をつくるため、精管吻合術を行います。
この手術は泌尿器科で行いますが、精管が閉塞してからの時間が短いほうが精子の回復はよいようです。
ただ実際、不妊治療自体が時間との戦いである部分もあるので、当院では、すぐにTESEを行うことが多いです。