第31回日本受精着床学会に参加しています。

第31回日本受精着床学会に参加しています。

医師の船曳美也子です。

体外受精の普及のために開催が始まった学会ですが、年1回なので、その年のトピックスだとか時代の流行りがよくわかります。

今年気になった話題の1つは、初婚年齢高齢化に伴い、高齢不妊女性が増えていることを受けて、女性に生殖教育を施す必要がある、と教育講演で話されていたことです。

どういう内容だったかというと、日本女性の平均寿命はこの50年で約30歳のびた。
が、閉経年齢は、紀元前86年の古文書「黄帝内経」に記されている49歳と、今の50歳でほとんど変わらない。
同様に動物的には妊娠適齢期があり、それは、18~30歳で昔から変わっていない。

2008年にASRM(アメリカ不妊学会)がだした勧告では、35歳をすぎれば不妊治療を先延ばしにするべきでなく、40歳をすぎれば卵子提供を考慮すべきであるという内容だ。

しかし、近年、初婚年齢は上昇の一途で、2013年には女性29.2歳となった。
2010年の35歳以上の初婚率が12.2%にもなっている。
動物的には老齢期であり不妊治療を即要する時期と結婚時期が重なる人の増加が問題である。

20~24歳と40~44歳の妊娠力を比べると、男性は1:0.8程度の減少だが、女性は1:0.14にもなってしまう。
だから、男性は年をとっても子供をつくれるが女性はつくる力が落ちてしまう。
アンケートではこういった知識をもつ女性は30%程度しかいなかったのでこのことを、女性に十分教育することをしなければならない。

概略は以上です。話されていたのは、70歳以上には見えない若さの名誉教授でしたが、座長の大学教授も深く同意されていました。
おそらく、こういう話の流れで、女性手帳の交付をすすめるという案がでたのだなと、深く納得しました。

お話は良かったのですが、二つの点をもっと理解してもらいたいと感じました。
1つは、女性は早くこどもは欲しいので治療したいけど、体外受精や人工授精をご主人に反対される方が多いということ。
これは、ご主人の心理的抵抗の問題です。生殖教育を女性にと強調されていましたが、実は、男性にこそ教育が必要だと思っています。

また、女性がたとえ知識をもったからといって、だから20代にこどもを生みます、ということになるでしょうか?できるものならそうしてるわ、という怒りの声がきこえてくるようです。
変えるべき社会制度もあるでしょうが、医療側として提示すべきものは、教育だけでなく、胚凍結や卵子凍結という選択肢をだしてあげることだと思います。
詳しくは、この秋に出版予定の本に書こうと思っています。お楽しみに!