生殖・内分泌委員会報告

生殖・内分泌委員会報告

医師の船曳美也子です。

2013年6月に発表された日本産婦人科学会の生殖・内分泌委員会の報告をお伝えします。

「子宮内膜症治療が妊孕能に与える影響に関する検討小委員会」によりますと、

  1. チョコレート嚢胞があると、卵巣予備能が低下する。
    特に4センチ以上もしくは、両側にあると卵巣予備能は特に低下する。
    (卵巣予備能が落ちるとは、体外受精しても取れる卵の数が減る、ということです。)
  2. チョコレート嚢胞を摘出手術することで、さらに卵巣予備能は低下する。また、チョコレート嚢胞の摘出手術で卵の質や着床が改善することもない。
  3. チョコレート嚢胞により、卵巣予備能が低下しても、IVF-ETによる妊娠成績に悪影響は及ぼさない。つまり、嚢胞があっても、受精卵ができれば、妊娠率は下がらない。
  4. ただし、チョコレート嚢胞による、卵巣予備能の低下が自然妊娠を阻害することは十分予測される。

とのことでした。
私たちも、チョコレート嚢胞のある内膜症のかたには、どうしても必要なときは手術を勧めますが、基本、手術よりも、早めの体外受精を勧めています。

今回の報告は、私たちの治療方針でよかったのだ、というフィードバックをもたらしてくれるものでした。

一昔前、内膜症を専門にしている先生方は、腹腔鏡手術の後に、自然妊娠が増えるので、まず手術をとおっしゃっていました。20代での挙児希望が多かった時代に、骨盤の内膜症を腹腔鏡治療するのは有益だったと思います。ですが、30代後半で挙児希望の方がふえている今の時代に、卵巣内内膜症の方に同じ方針で手術するのは、むしろ有益性を損なうようです。

もし、治療方針で相談あれば、カウンセリングを予約されるか、診察にお越しいただければと思います。