子宮腺筋症と着床不全…その1

子宮腺筋症と着床不全…その1

医局カンファレンスです。

子宮腺筋症の胚着床への影響について教えてほしいとのご要望が増えてきました。

子宮筋腫や子宮内膜症に比べて、子宮腺筋症と不妊症の関係についての情報は限られています。生殖医療の専門家にとってもこの問題は同じであります。
まず今日は子宮腺筋症とはどういうものか確認しておきます。

子宮腺筋症は、子宮筋層(筋肉の壁)の中に孤立した子宮内膜組織が発生した状態です。
腺筋症がなぜ生じるのか、2つの説があります。
ひとつは内膜が筋層の中に侵入するため、もうひとつが筋層の中で新たに内膜組織が作られるというもので、幹細胞などの未分化な細胞が関わっているようです。

1980年代半ばまでは、病理組織診断、つまり摘出した子宮の標本を顕微鏡レベルで調べることによってようやく診断可能な病気でした。

子宮の筋層と内膜の間には、はっきりした境界はありません。
肉眼や顕微鏡で観察しても、ここからが内膜、こちら側が筋層というような境目を示す構造がないのです。
このため「孤立した」内膜組織を確認することが病理診断の鍵でした。

その後のMRI(核磁気共鳴画像)の発達によって子宮を取り出さなくても画像診断が可能となりました。
MRIでは「『内膜直下の筋層(junctional zoneと呼ばれる部分)』が分厚くなる」のが特徴的なサインですが、最近では超音波の鮮明度が増し、分厚い筋層が観察できるようになり、診断の精度がMRIと同程度まで向上してきています。

症状については、何もない方から、激しい生理痛、月経とは関係のない慢性骨盤部痛まで個人差が大きいのが特徴です。子宮内膜症を合併している方は症状が強く出る傾向があります。

また子宮筋腫を合併することも多く、過多月経や過長月経などの原因にもなります。

そのほか、案外知られていない事実に経産婦(出産経験のある女性)に多い、子宮体がんや前がん病変の発生の下地となる(早期発見されることが多い)などがあります。