体外受精と前置胎盤のリスク

体外受精と前置胎盤のリスク

医師の田口早桐です。

Risk of placenta praevia is linked to endometrial thickness in a retrospective cohort study of 4537 singleton associated reproduction technology births

Human Reproduction, Vol.29, No.12 pp.2787-2793, 2014

前置胎盤は、深刻な母体合併症の一つで、子宮内での胎盤の付着部位が下の方にあり、子宮頚管を覆っている状態です。

胎児の通り道を胎盤が塞いでいるので、帝王切開が絶対必要ですが、妊娠中期から出血することも多いし、また子宮の下部は血管が豊富で収縮が弱いため、帝王切開時出血多量になったり、ひどいときには子宮摘出のリスクがあります。

体外受精で前置胎盤のリスクは増えるといわれていますが、今回の研究では、刺激周期での新鮮胚移植、ホルモン補充周期での凍結融解胚移植、自然周期での凍結融解胚移植において、どの要因が前置胎盤リスクに寄与しているかを調べたものです。
移植周期別では、自然周期融解胚移植で、少しリスクが低いことが分かりました。

因子として、喫煙、子宮内膜症、そして子宮内膜厚、が影響していることがわかりました。
子宮内膜厚9mm以下の場合に比べ、9~12mmでは2倍、12mm以上では4倍のリスクがありました。
ただし、自然周期で子宮内膜厚を測っていないため、自然周期でのリスクの低さが子宮内膜厚によるものかどうかは不明ですが。

一般に着床に対しては子宮内膜は厚いほうが良いと思っていることが多いのですが、前置胎盤においては厚いほうがリスクが高まる、というのは驚きでした。ただし、12mm以上になる例というのはそれほど多くありませんし、通常は7から10mmまでの厚さで移植を決めることが多いのが現状です。

論文中にその推測される原因がいくつか述べられていますが、イマイチすっきりしません。
原因が分かり、予防法が見つかればよいのに、と思っています。