シンガポールのクリニックで…

シンガポールのクリニックで…

医師の田口早桐です。

また、心臓に悪い記事を読んでしまいました。
シンガポールのクリニックで、精子の取り違えがあったようです。

以下、抜粋です。

【6月22日AFP=時事】
夫の精子で体外受精したつもりだったシンガポールの女性が、出産後に他人の精子で受精させられていたことに気づき、体外受精を行ったクリニックを相手取り訴えを起こした。
20日の現地紙ストレーツ・タイムズ(StraitsTimes)が報じた。

訴えを起こした中国系シンガポール人女性(36)は、体外受精を経て2010年に出産したが、生まれた女児の肌や髪の色が白人の夫のものと著しく異なったことから、クリニックのミスを疑うようになったという。

その後小児科医により、夫婦からは血液B型の女児が生まれることは科学的に不可能であると告げられ、女性は体外受精でミスがあったことを確信した。
夫婦は女児の養育を続けているが、ともに「精神的なダメージが大きく」、さらに夫は女児の認知を拒否しているという。

もちろん、あってはならないことで、当院では確実にするために、同じ場所で異なるカップルの配偶子(卵子と精子のこと)は扱いませんし、ダブルチェック、トリプルチェックを必ず複数人で行います。
それでも尚、このような記事をみると、命が縮みます。

しかし、本当のところは分かりませんが、「夫は女児の認知を拒否している…」と言うくだりにまた、悲しみを覚えます。
もちろん、夫は犠牲者だし、きれいごとばかりではいられませんが。

話は飛びますが、子供の頃、「ももたろう」や「一寸法師」など、子供に恵まれない夫婦のところに赤ん坊がやってきて(授かって)、それを大事に育てたという物語を、たいして不思議に思わずに自然なこととして聞いていました。
生殖医療が発達し、性と生殖が切り離されてしまった今、まさにその渦中で仕事をしている私にとっては、技術によって世の中が「世知辛い」方向に行くのではなく、おおらかな方向にシフトしていって欲しいと、切に、切に願っています。