どんな人が対象になるの？
医学的卵子凍結の対象は、
● 抗がん剤や放射線治療の影響で卵巣機能の低下が予測される人
● 乳がん、白血病、リンパ腫、子宮頸がんなどの治療を受ける予定の人
● 10代後半～30代など、若くしてがんと診断された人
などです。
また、主治医と生殖医療専門医が連携して実施可否を判断します。
月経がまだ始まっていない場合、月経開始後でも採卵操作が困難な場合では、卵子ではなく卵巣組織の一部を凍結保存する方法が選択されます。
ミズイロのお話のなかでは、医師と胚培養士が高校生への「人生設計」として生殖医療の特別講義を行っています。
そのなかで胚培養士が
望んだ時に
望んだ相手と
望んだ形で。
そのために知識が生きると嬉しいです。
と高校生たちを前に話しています。
この言葉は、高校生だけでなく、すべての人に向けられています。
「望んだ時に、望んだ相手と、望んだ形で」
そのためには、妊娠や出産、月経、卵子、精子など、正しい知識を持つことが大切です。その一つが卵子凍結です。
望んだ時に、望んだ相手と赤ちゃんを授かりたいと思った時に、それを叶えるために卵子凍結はあります。
どんな流れで行われるの？
患者さんと主治医が相談し、患者さんが希望した場合に生殖医療専門医が紹介されます。
● 卵巣の状態をチェック（超音波、ホルモン検査など）
● 排卵誘発剤で卵胞を育て、採卵（約2週間程度）
● 卵子を凍結保存（ガラス化法で液体窒素下に）
と、以上のような流れで行いますが、この卵胞を育てる周期については「月経の開始」を待つことは、あまりありません。
なぜなら、この患者さんは「待ったがない状況」だからで、抗がん剤治療の開始まで1、2ヶ月しか採卵の余裕がないこともよくあるからです。
実は、卵胞は月経周期の始まりを待たずに、常に育ち始めています。卵巣内では、常に卵胞は育っていて、月経周期のいつかに関わらず2～5 mmほどに育った卵胞であれば、排卵誘発剤で卵胞を発育させることができます。
月経周期に関係なく採卵できる方法を「ランダムスタート法」といいます。がん治療を控えている患者さんのように、時間的な制約がある場合に用いられます。
どの誘発剤を、どのように用いるかは、一人ひとりの卵巣機能や年齢によって違いがあります。
10個以上の卵子を凍結できることを目指しますが、１回の採卵でなく、抗がん剤治療開始までに余裕があれば、２回、３回と繰り返すこともあります。また、１回の月経周期で２回、卵巣刺激を行うこともあります。
ランダムスタート法での採卵
ランダム排卵誘発
卵子の凍結保存が終わったら
無事に卵子が凍結できたら、がん治療が開始します。辛い治療が何クールか続くこともあるでしょう。また、再発を心配することもあるでしょう。
今は、医学も発展し、早期発見であれば多くのがんも寛解することができるようになってきました。年に１回は、健康診断を受けましょう。
全身の健康状態を調べる健康診断は、とても重要です。それは、妊活だけでなく、生まれてくる赤ちゃんと健康に楽しい毎日を送るためにも重要なことです。
病気が見つかっても、きちんと治療を受けることで、守られることもあります。とくに、がんは早期発見が重要ですから、忘れずに受けましょう。
そして、凍結した卵子は、将来、妊娠を希望する時期に融解し、受精・胚培養を経て移植します。
実際に出産に至った報告も増えています。
医学的卵子凍結は、がん治療を優先しながらも「将来の命を残す」ための医療です。
「治療の前に知っていれば…」と後悔する方を減らすために、私たちは正しい情報を届け、連携医療を進めています。
凍結した卵子は、その年齢に近い妊娠率を維持することができることが最大のメリットです。
なぜなら、卵子の質を保った状態で凍結保存ができるから。
漫画の中では「未来へのタイムカプセル」と呼んでいますが、そのタイムカプセルは、凍結タンクに守られています。
もし不安や疑問がある方は、まず主治医や生殖医療専門医にご相談ください。
一歩を踏み出すことで、未来への可能性が広がります。
次は、第7話です。卵子は、どのように凍結されるのかをお届けします。
＜＜ミズイロと学ぶ！‒ 第6話 がんになっても、将来ママになることを諦めない！（その1）へ
第7話へ続く
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