慢性子宮内膜炎…その9

慢性子宮内膜炎…その9

医局カンファレンスです。

「慢性子宮内膜炎患者の子宮内膜では、胚着床に重要とされる幾つかのタンパク質の量が少ない」という発表が最近ありました。
(Di Pietro C et al., American Journal of Reproductive Immunology, in press,doi: 10.1111/aji.12076)

このイタリアの研究グループは以前に子宮内膜マイクロポリープと慢性子宮内膜炎の関係(2012-09-25のブログ参照)を最初に報告しています。

正常な子宮内膜では、月経が終わるころから各種細胞が増殖を開始します(増殖期)。
排卵を境にこの増殖は停止し、細胞は着床に必要な蛋白を分泌するようになります(分泌期)。

ところが、慢性子宮内膜炎の患者さんの分泌期子宮内膜を調べると、IL11やCCL4といった着床に必要とされる分泌型炎症性蛋白の合成が少なく、BCL2やBAXといった細胞増殖に関わる分子の量が多いことが分かりました。

慢性子宮内膜炎の胚着床期子宮内膜は、本来あるべき姿の分泌型ではなく、排卵前の増殖型をしばしば呈することを、私たちも以前に確認しています (Kitaya K et al., Modern Pathology 2010;23(8):1136-46)。

この状態では、よい胚を移植しても子宮内膜への接着は難しいと考えられます。

今回の研究結果と合わせて、慢性子宮内膜炎では、胚に比べて子宮内膜が「遅れ」をとっていることが、着床不全・着床障害の原因となっていると推測されます。