第58回 日本卵子学会に参加しました

第58回 日本卵子学会に参加しました

培養士の中森です。

先日、第58回 日本卵子学会に参加してきました。
以前から患者様から質問を頂くことが多い、正常受精が確認できていない胚の取り扱いについての発表がありましたので紹介したいと思います。

採卵翌日の受精確認の際に卵子由来の雌性前核と精子由来の雄性前核という2つの前核が出現(2PN)していることで正常受精を判断しています。この時に前核が観られない、1個しか観られない(1PN)、3個(3PN)以上観られる場合は正常な受精が起こっていない可能性があります。3PN以上の場合は染色体に異常がある場合が多く移植の対象にはなりません。

前核はしばらくすると消失し細胞分裂が始まります。
そのため観察のタイミングによっては2PNを観察できない可能性があります。
一般的に、前核は受精後20時間前後で出現し、その後消失することが知られていますが、該当の時間に観察を行っていても卵によって受精のタイミングや成長のスピードが異なりますので、前核が観られなかった場合でも一概に正常受精ではなかったとは言い切れません。
他にも受精していなくても卵子に針が入っただけで細胞分裂が生じ分割胚まで進む単為発生もあります。

この発表では、これまではICSIでの1PNは移植対象とはならないとのことでしたが、胚盤胞まで進んだ1PN胚の90%以上が雌雄の前核を有していた、と報告されていました。これは、雌雄どちらかの前核が小さい、あるいは雌雄の両前核が独立した前核を形成せず癒合していて、1PNに見えていたというものです。

つまり胚盤胞まで進んだ胚は正常な受精が確認できていなかった場合でも優先順位は下がるものの移植の対象としても良いということです。また、胚盤胞には精子の遺伝子が必須である為、胚盤胞まで進んだ胚は単為発生の可能性も排除できます。

これらのことから、当院でも正常受精が確認できていない胚であっても妊娠の可能性があると判断した場合は移植・凍結することをお勧めしています。